賀茂街道は落ち葉吹雪
トラックやバスの往来に茶色い乾いた落ち葉が舞い上がる
ここ数日温かいが
そのうち本当の吹雪が吹き荒れる
北山の事務所で開催中の歴代サンプルの販売
上代より少しお安くしているのも手伝って
着々とハンガーラックからサンプルが剥がされていく
cassowaryで完売した品番
なぜかオーダーがつかず生産に至らなかった品番
結果的にかなりのバリエーションを展示できている
ずらりと並んだいろいろな年代の作品
懐かしい品番に作業の手は何度も止まった
それぞれの品番にまつわる苦労を思い出す
特に苦労した品番は出来る事なら自分で着たいのだが
悲しい事実があって着る事が出来ない
サンプルとは言え
しっかりと人が着るものとして仕上っているのだから
役目を果たしたのなら誰かに着てもらえる方がいい
そう思ってすべて手放す事にした
元々コレクション性質を持たないので
一切未練はないのだが
洋服のデザイナーとしては一般的ではないと思う
昔から知り合うデザイナーはほとんど古着から自分のデザインした服まで
10坪くらいの倉庫に大量にしまい込んでいた
僕にその部屋すらない
新しいデザインをどんどん創るのは好きだ
でも創ったものは自分が着ないのなら必要はない
そう思ってしまう
来年の秋冬は出来る限り新しいデザインをリリースしようと考えている
だから過去のサンプルは必要ない
そうする事で過去への依存を断ち切る事も出来る
『ここをこうして生地を替えて』
そう言う方法で前回より良くなる事も多々有る
でもそれは今年までにやり終えた
そうなりゃ次はまた冒険に出るしかない
勇気をだして久しぶりに大きく一歩踏み出してみる
と言う訳で
ちょっと製作を急がなくちゃいけない

no:11115
昨年創った渾身のムートンコート
トスカーナの高価なムートン
トグルには友人の父上が仕留めた鹿の角
パターンはムートンにあるまじき袖振り
展示会オーダー
ZERO
必然的にcassowaryに押し付けられた在庫は8着
昨年6着売れて
先週まず1着売れた
そして昨日
12月16日
最後の1着がオーナーを見つけた
2年をかけて完売
昨日はスタッフと祝杯をあげた
このムートン諸事情あって着工時と原価が大幅に変わってしまった
僕の判断が遅かったせいでトスカーナのご奉仕品が完売
よって正規の値段で購入しなくちゃいけなくなった
でも絶対にすごいものが出来ると知っていたので
思い切って進行する事にした
最後の1着が売れるまで利益が出ない馬鹿息子
その手のかかった暴れん坊が昨日立派に世に出て行った
最高の気分だ
今年の秋冬はレザーを一切やらなかった
そのフラストレーションは僕だけでなく
お客さんからもありがたい事に主張されている
来年の秋冬はやろうと思う
merphとmerph_anima両方で
しっかり絵を描いて
パターンナーと工場と大騒ぎする
そして
昨日これも完売
MR1018_black
ちょうど50着売れた
残すところgrayのsize1が1着
今年は本当に消化率がいい
少し生産をビビったのも有るが
それでも数を見るとスッカとする枚数が旅立った
春も頑張るぞ
皆様
宜しくどうぞ

この週末
続々と完売品番が出ている
なんと6品番が完売
この達成感
黒ラベルがすすむ
7月から始まった秋冬の展開
最初は汗だくになりながら仕分けして出荷した千数百枚の作品は
およそ8割オーナーの手元へ届けられた
毎日毎日誰かしら僕の服を手にとり
そして所有者となってくれた
それはもの凄く特別な出来事だと思っている
洋服をデザインし生産して
それを販売する
大きく分ければそこら中に溢れた出来事
でも
小さな会社でたった4人のユニットが
これだけ多くの洋服を世に出していく事は簡単じゃない
ましてや看板を出さず
雑誌の取材を断固拒否している立場では
世の中の常識からすれば自滅行為に見えるはず
ならばなぜそれを選択したか
よくたずねられる
こたえは至って単純
その方が僕のやりたい事が出来るから
そして
本当に僕の洋服を着てくれる人のほとんどが
その姿勢を信頼してくれる
これで良いと
そう思う
いろいろなやり方があるのは当然
どれかが正解なのではなく
どれを選ぶかだけの話
僕はこの方法を選んで
楽しくやっている
12月16日
今日も今から店を開ける
僕は北山で店番
既にたくさんの来店予定の連絡をもらっている
『今日店行くわ』
この連絡はいつもらっても心底嬉しい
ちょっと多めに朝食を食べた
珈琲も上手く入れられた
今日もばっちり洋服を自慢する

昨日は良い一日だった
北山の事務所でゆっくりと始まった12月14日
昼過ぎから打ち合わせをし
2013年の秋冬を少し前に進めてから
夕暮れ前に活気溢れるcassowaryへ向った
12時のオープンから途切れる事なく覗いてくれた顧客さんの何人かと
楽しく話をして
17時過ぎに若き大学教員の来店を待っていた
彼との話は本当に面白い
真っ直ぐと好意と熱意を表現できる数少ない友人
昨日の話も面白かった
この話
是非弊社絶好調無責任男
吉川薫にも響いて欲しかったのだが
聞いている表情はまたしてもキョトン顔
まだまだ時間はかかりそうだ
偶然と呼ばれるできごとも
緻密に時間をかけた努力と工夫で創り出す事が出来る
狙う偶然は
相手にとって偶然である必要は有るとしても
仕立て上げる事は出来る
ある青年の話
会社を立ち上げ
大きな契約を取るにもその相手に見向きもされない時
彼は無理にでもファーストクラスに乗り
一流ホテルに宿泊をし続けた
そしてある日ずっと面会を希望していた大物とファーストクラスで隣の席になる
十数時間のフライトのほとんどを占有し
やがて
大きな契約を手に入れる
僕は偶然の出会いや出来事が人より多いと自負している
それはその偶然が起きる様に
必死に自分の事を話したり
他人の事を知ろうとして
種をまくからだと思っている
洋服屋で働いていて
ただ洋服の話をして
当たり障りなく過ごしていても特別な出来事は起きない
昨日飲みに行った料理屋の話から
20年前にしでかした小さないたずらの話まで
それを話す必然性を探りながら
演出しながら
そして時々
思いもよらぬ関連性が露になる
無差別に人に会う仕事
これを楽しまない手は無い
それを六角の守り人にもわかってもらいたいのだが
…..
まだまだ時間がかかりそうだ

メルトンみたいなフリースを使ったパーカ
これがもの凄く温かい
これがあれば北山の寒さに対抗できる
本日
吉川店長に購入を打診してみる
さあ12月14日
昨日早く休んだおかげで
息子から移された風邪は大方回復した
今日は北山と六角を行ったり来たり
途中何度か打ち合わせをしなくちゃ行けない
12月と1月は半分くらい仕事が機能しない
だから1日の油断が大きな遅れを招く
わかっちゃいるがそれでも油断するのが悪い癖
既に大分遅れている
気合いを入れ直してこの週末取り戻す
昨夜今シーズンの生産を数字的に見直してみた
現状81%の消化
merphのコート類に関しては87%の消化
300着近く用意したコート
今年も見事になくなって来た
嬉しい
しかし
これは来年もしっかりやらないといけないというプレッシャーにもなる
merphにとって
cassowaryにとって
やはり最大の武器は重衣料
ずっと同じ様にやっていても駄目だし
突き詰めなきゃいけないところは継続しなくちゃいけない
来年の秋冬は新しい形を沢山出したい
8年間培った理屈をしっかり反映させた
元来僕が自分の洋服を創ると決めた時に挑戦した要素を
8年経った今
もう一度妄想全開でトライしてみる
経費も時間もかかるけど
そろそろ修練にも飽きて来た
どんな事になるかわからないけど
兎に角
やってみる
挑戦した結果は善かれ悪かれ糧になる

本日
15時から17時ってあったか?
集中して取り組んだ仕事のせいで
気が付いたら外は真っ暗だ
夕暮れを見ながら聴こうとスタンバイしたiTunesを
ならす事もなくそのまま陽は暮れた
冷え込んだガラス窓
その近くで作業していたから肩が圧倒的に凝り固まった
頭が痛い
ので
これにて失礼
明日は多くの来店予告が届いている
明日のために
今日は電気毛布を起動して
早々と床につく
つもり

事務所にはスプリングコート
頭の中には来年のトレンチコート
最近
何かしら申し込み用紙に日付を記載する際
2013年
と書いてしまう
今年も洋服を創る連中にとってそんな季節がやって来た
この仕事をしていて嫌になる事は他にもある
普段道端で歩いていても
飲み屋で黒ラベルを飲んでいても
常に誰かの洋服を睨みつけている事
仕事の時以外は洋服創る事は忘れたいけど
この世の中どこに行ったてみんな服を着ている
今は仕事の事をわすれたいから
みんなに裸になれと言える訳も無い
かと言って
そんだけ洋服を睨んでいても
それで洋服が思いつく訳でもない
僕の場合
机に向って目の前に洋服など紙と鉛筆しか無い状態でしか
新しい洋服は浮かんで来ない
そうなら

我が脳味噌に申す

もっとくだらなくても良いから

他の事を考えろ

今年の4月の展示会
出来上がったサンプルをずらりと会場に並べたとき
ずいぶん大人っぽい服になったなあ
と安心した
あれから8ヶ月
沢山の人に僕の創った服を選んでもらい
それを嬉しそうに着て頂いている姿を見て
更に安心した
2013年春夏もそうなる事を祈っている
12月になり
続々と北山には春物が到着している
今日も大量にスプリングコートが到着
また騒々しい日々が始まる
シーズン開始からふた月ほど
北山のショールームスペースは
段ボールとハンガーラックで埋め尽くされる
特に最初のひと月は
cassowaryに納品する事も出来ないから大変だ
田和が限られたスペースを最大限に利用して
無数の新作をなんとか事務所スペースに納めてくれている
春夏の終末
2013年の7月に
今回の秋冬のごとく
見事に消化してストックルームはガラガラになるだろうか
不安と期待
またそれを抱えて新しいシーズンがはじまる

陽が落ちるのが早い
北山は陽が落ちると一気に冷え込む
たった3分の通勤もきつい
ただあの灼熱湿気飽和状態の夏の通勤を思えば
全然ましだ
先週末
沢山のご来店本当に感謝
次々とオーナーが決まっていく残り少ない作品達
いよいよ完売の札が連発しそうだ
東京は原宿で働いている時
時のブランドの総本山に驚愕のメッセージを見た
『SOLD OUT』
売れに売れてそのシーズンの在庫がなくなったそうだ
同じ付属屋を使っていたからそこから聞いた
あれ以来
いつの日かcassowaryのガラスにその文字を打ち出してやる
そんな野望を持ち続けているが
お客さん思いの弊社店長はしっかり在庫を蓄えて
日々皆様のご来店を鼻の下を伸ばして待ち構えている
『SOLD OUT』
は夢だとしても
『今月はよく売れたから2日くらい店閉めてゆっくりしよう』
くらい言ってみたい
春物の問い合わせもちらりほらりと頂いている
まだ大声で言えるほど納品はないので
北山で少しだけ展示しているのと
納品の速報はmerph facebook pageでアップ中
気になるものあればお気軽にcassowaryのあいつへご連絡を
もうすぐ陽が暮れる
今日も寒さが襲って来る
北山
ここは夜になると北陸地方になる

12月9日
弊社の要石
田和幸子の誕生日
おめでたい
その良き日に北山に遂に雪がちらついた
冬本番
ここから親しい人々の誕生日が年の瀬まで連発する
そのなかには僕の38回目も含まれる
昨夜は相方(福松の大将)を誘い
ゾンビのライブを観に行って来た
ゾンビとは思えない生命力に溢れたライブ
奴らがまだ肉が腐る前
大人の事情というなの防腐剤で標本みたいにされていた頃
楽屋で衣装担当としてライブを見ていたが
今の肉が腐った自然体のライブはなんだかほのぼのとする
ただし圧倒的に前より攻撃力のある
すばらしライブだったと思う
ボーカルのゾンビが新福菜館のラーメンの話ばかりするから
四十前のおっさん二人
いけないと思いながら
木屋町へ吸い込まれた
久しぶりの大きな音で音楽を聴いて少し気持ちが高ぶったせいにした
嘘をつかなくていい環境ってのはなかなか手に入らない
大人になると嘘をつくのが優しさといわれる
今朝
CATVのCMである有名化粧品販売マネージャーがこう言っていた
『28年間この仕事をやって来て
お客様に嘘をつかずに自信を持って勧められる商品は
これが始めてです!』
彼女はその商品の素晴らしさを伝えるために
28年間人を騙して来た事をにこやかにカミングアウトした
CATVの性質上
彼女のこの証言はXX時55分あたりから
繰り返し
繰り返し
放映される
このCMが何のためらいもなく垂れ流されるのは
世の中が嘘をつく事が当たり前だと肯定している証拠
正直者には福は来ない
正直者は馬鹿を見る
いいじゃない
正々堂々と馬鹿を見てやりましょう