翼を閉じたエンジェル

春のmerphには翼がある
この翼
僕はウイングベントと呼ぶ
機能としてしっかりベントの役割がある上に
美しいディテールとして洋服に華を添える
気に入っている

奇をてらう
これは好きではい
でも
優等生の模範解答のような仕上がりもつまらない
独自のアイデアでいて
理論派も納得させたい
それができるアイデアってのはそんなにポンポン出てはこない
しかし
納得がいくものが見つかれば
それはmerphの財産となる

これまでに自分の洋服を賞賛してもらった言葉の中で
一番嬉しかったのは
『アカデミックな服だ』と言われたこと
洋服に僕は芸術性を求めていない
学術的で建築的なものが創りたいと思っている
生地の柄や加工技術やプリント
そういうのは僕の仕事ではない
形を成す=merphと名付けた責任を全うしたい

昨年の秋冬から
黒の裏地にネイビーの綾キュプラを使ってる
黒にはグレー
安心はするがおもしろくないと感じていた
そこで
美しいネイビーをさしてみたら
グッときた
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そして
ivoryにはゴールドをさした
またグッときた

表だけで満足してちゃいけない
裏にもグッとくる服
脱いでも褒められる服
そうでなくちゃ

雲り のち 

計算 計算 計算 計算
探し物 探し物 探し物 探し物
2月恒例の決算作業
1年のズボラが我が身に豪雨となって降り注ぐ
11年も繰り返してきた後悔と反省は
おそらく来年も例外なく繰り返す

辛うじて前年売上を上回った2015年度の実態を
この作業の末突きつけられる
洋服だけつくっていられるデザイナーになりたいが
僕の作る洋服はそこまで僕に楽をさせてくれない
自由を手に入れるために
不自由を受け入れるジレンマ
世の中の摂理
受け入れるほかなし

思えば有限会社Sanctum
5年目までは快調に売上を伸ばし
夢も見放題だったと
記憶も記録も示している
6年目に驕りたかぶる男は見誤った
その時の傷跡は深く深く会社と僕個人の人生に残っている
少しずつ少しずつ取り戻そうと頑張ってきた
もう少しでもう一度挑戦権を争えるとこに戻れそうだ
今が一番苦しいけれども
やるしかない
2016年度
今 描いている計画通りに行けば
自発呼吸ができるようになる
枷の外れたmerphを僕も早く見たい
もう少し
もう少しで雲は途切れる

発見

ホテルで何気なくFBを覗いていた
すると
スバルのインサイトのCMがアップされていて
その中に僕のフィルターに引っかかるフォルムを発見
merphの前身lalu最後のシーズンにリリースしたフィールドコート
それを主人公のお父さんが着ていた
以前もちょうど東京の出張中に
同じくホテルで眠りまなこで見ていたFBの中に
確か大同生命のCM?で
洋服屋の店主役の男性がmerphのシャツを着ているのを見つけた
映画やドラマの衣装は角川大映製作所直属の部署から
オーダーをいただくので
当然誰がどの作品で切るか知らされる
だが
こういうCMとかはどこで手配されたのかわから無い
だから発見したのは本当に偶然
でも我ながら
その小さな画像の中ですぐにわかる
自分の服が持つオリジナリティに少し自信を深めた
お時間あればご覧あれ
SUBARU

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ところでこのlalu最後のマーク
わかりますかね?
音楽やってる人ならわかるかな?
フェルマータ
こんな洒落たことやってたんだなあ
歴史もたまには覗いて見るのもいいものだ
merphでもたまには洒落っ気のあることやってみようかな

 

キッチンにはデザインブックとサッポロ黒ラベル

去年のちょうど今日のこと
cassowaryに念願のキッチンとカウンターが出来上がった
あの日からデザイナーがカウンターで
大根を面取りする洋服店の歴史が始まった

洋服屋など
どこも同じ面をしている
やってる本人にはきっと特別な空間に見えているのだろうが
ハンガーラックに服がぎゅうぎゅうにかけられて
平台や棚に畳まれた洋服が積まれている
ディスプレーにはアンティークの何かしらが絡められ
普通洋服を飾らないものに洋服を飾って工夫した気になっている
かく言うわたくしも若かりし頃その類いだった

後輩の内装デザイナーにシンプルにただの箱を作ってもらい
そこに名作の家具を並べた
そして洋服はゆったりとハンガーに吊るした
畳まざるを得ない洋服はストックに隠し
わざわざ毎度出してきて接客した
やがてこの偏屈を受け入れてくれる人たちが増えて
ストレスの無いわたくしの遊び場が出来上がった

その極め付けがこのキッチンとカウンターだ
仕入れ途中の近所の板前が
コーヒー一杯飲みながら大根の皮をむいって行く洋服屋が
どこかにあるなら教えて欲しい
気分の良くなった音楽家がウイスキーを舐めながら
カウンターでギターを弾き出す洋服屋が
どこかにあるなら教えてほしい
多分探すのは難しいだろう
だから
自分の店をそういう店にした
羨ましいだろう
いつもこのカウンターに座りながら
そう思っている
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11

ここをご覧いただいている皆様
本日
我が有限会社Sanctumは11周年を迎えました
一日気を抜けば簡単に潰れるほったて会社が
11年持ちこたえて来れたのも
わたくしの製作する洋服をご着用いただいている
全ての方のおかげであります

記憶を遡れば
最初に創ったのはAラインの袖の太いヘンテコなTシャツでした
その後我がレーベルのアイコンになったフードパーカ
続いてレイヤードのデニムパンツ
そしてコレクションの大半を占める数々のコート
好き勝手創ってまいりました

12年目となるオリンピックイヤー
幕開けは東京で迎えています
今年の戦略会議を日々営業担当と話し合いながら
どうしても実現したいいくつかの目標に向かい
にじりにじりと進んでおります

一年もたないと言われた悪童の会社の12年目
東京は快晴です
記念日の最初の買い物は777円でした
夜は仲間に食事に誘われています
良いスタートとなりました
期待してくれる方にしっかり応えるよう仕事します
どうぞこれからもよろしくおねがします

期待されなかった男たちの逆襲

冬の間
店の奥まで突き刺さっていたrainbow
冬至を過ぎてから次第に角度が浅くなり
やがて春とともに消えて無くなる
月並みだけど
もう一年の1/12が終わる
早すぎる

四十も超えたというのに
新年早々あん時ああしときゃよあったのオンパレード
後悔先に立たず
しかし後からでも挽回できる
昨夜のサッカーU23の試合見ていてちょっと感動した
その昔
日本初のワールドカップ出場を目前で打ち砕かれた
かの有名な『ドーハの悲劇』
その年に産まれた青年たちがやってくれた
各年代の世界大会にことごとく予選落ちし
散々”谷間の世代だの”
”ヒーロー不在”など言われてきた奴らが
見事にオリンピック行きを決めた
誰か一人じゃなくこのチーム一個がヒーローになった
そして23年間
『悲劇』の場所だったドーハは
その年産まれの青年たちによって
『歓喜』の場所として歴史に刻まれなおした
歳のせいか
最近こういうドラマチックな奴にめっぽう弱い
おかげさまで今日は左腕が折れて腰は捻挫してるけど
やる気に満ち溢れている

追記
昨夜の試合
我が社の不燃物の心にも火をつけたことを祈る

8年前

期末の在庫整理をしていると
ハンガーラックの奥から懐かしい作品が顔おを出した
8年前のちょうど今頃絵を描いたコート
シンプルながら
当時にしては自分がやりたい雰囲気をうまく出せた作品
ディテールを細かく見れば突っ込みどころ満載だけども
merphが目指すフォルムを最初に手に入れた作品

僕がmerphという名前を冠して服を創るのは
佇まいを創りたいという意思表示
自分自身の洋服のフォルム
暗闇で人影が見えて
そのシルエットだけで僕の服だとわかる洋服が創りたい
そう思っている
8年前に大体の方向が決まって
その四年後merphを始めた
でもまだまだ未熟
まだまだこれから

拳銃と赤い薔薇

先日四十男四人集まって
閉店間際のビストロでNovember rainを大合唱した
『ガンズを聴いてこなかった同世代など信用できない』
そんな極論を叫びながら
スラッシュのギターソロを真似てエアギター

それからというもの
看板も出さず洒落こいた店は
レスポールギターを
マーシャルで鳴らすディストーションが鳴り響いている

高校の音楽の自由発表で
篠原と片桐と僕の三人でPatienceをやった
僕は12弦ギターでストロークを弾きながら
ボーカルと口笛を担当
篠原はダフマッケイガンのパート
片桐はスラッシュのソロ
完璧だった
いつも口うるさい”おんばば”(先生ごめんなさい)も絶賛
その発表の後
数日間
僕らはちょっとモテた

今思えば
この三人でバンド組めてたら
弟と同じく松蔭高校の同級生バンドでデビュー!
できていたかも。。。
いやそんなに甘くはないか。。。
僕らは一年の時は同じバンドだったけど
その後
あの夢のセリフ『方向性の違い』を吐き捨てて
僕は違うバンドを組む
微笑ましい若き日の思い出
篠原は今でも時々飲む
あのロッカーは今や二人の娘の父
片桐はどうしてるだろう

拳銃と赤い薔薇のCDジャケットを見ていたら
なんだか昔の仲間に会いたくなってきた昼下がり
今日も左腕の折れた役立たずは
倉庫の棚卸しができず店番
珈琲啜りながら
今からDon’t cry(original)を斉唱

氷点下

今日の朝の京都市左京区は氷点下だった
暦の上では洋服業界すでに春なのだが
今年はもう少しのんびり『冬』をやらせてもらうことにする
何型か完売となったものもあるけど
まだまだコート十分に揃っているし
春はもう少し冬を楽しんでからでいいかなと思っている

とはいえ
嬉しい問い合わせも頂いてるので
今年の春ものをすこしずつお披露目
上の写真は今期のわたくしの一押し
淡いオフホワイトのライトバックサテンを使った
モンクジャケットと名付けた作品
納品をお楽しみに

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今日は又しても店頭勤務
David Bowieの★を聞きながら
カウンターで珈琲飲んでいる
皆さんに左腕を気にかけてもらって申し訳ない
昨日病院に行ってきたけど
まだまだかかりそうだと言われてしまった
今月末の東京出張までには治したかったけど
間に合いそうもない
しらすと桜えび
たくさん食べようと思う