理由

簡単に言えば
Uネックにフードが付いているんです
そんなの見ればわかるんです
なぜ Uネックにしたかが問題なんです

通常のパーカのフードはクルーネックについています
頭の中で考えてください。
フードの膨らみは全て当然背中側に向かっています
それをクルーネックにつければ
重心は背中側になります
そうなれば当然フードは背中側へ落ちます
首元のボリュームを出したいのに
単純な発想でフードを大きくすれば
さらに後ろに落ちてしまうわけです
そこでまず逆転の発想
フードを小さくしました
後ろに引っ張られる分量を少なくしたわけです
meprhのフードは後ろではなく
まず上に向かって生えています
さらに重心を中央に持ってくるために
前に倒れる部分を設けました
そう
だからUネックなんです

たかがパーカ
そこにここまで真剣に取り組んでいるデザインは
他にはないと自負しています
そのおかげで
このパーカは13年間
皆さんの支持をいただいたと思っています

”場所”

11月の上旬は
金沢の月とトネリコをチーママに任せて
私は京都で洋服の制作とcassowaryで販売に励んでおります

堺町六角に巣食って10年
名は知らずともこの店の存在は京都でも少しは知られてきたようです

自分が高校生の時
名古屋で通いつめた洋服店の店主に
いろいろなことを教えてもらい
大学で京都に移り住んでからも
帰省のたびにまず顔を出しては
新しい服の話や
京都での生活を楽しんでいる報告をして
盛り上がると
近所の酒屋に走らされて
ロング缶の黒ラベルを二本買って
日が暮れるまで店に居座っていました


自分があの当時のその店主の年齢になり
同じようなことが立場を変えて目の前で起こります
学生だった青年が綺麗な彼女を連れて現れたり
子供を連れて遊びにきてくれたり
歳をとったのか
そういうことがものすごく嬉しい今日この頃です

ただ洋服を売るだけだったら
私もこんな店をしないわけです
その上
BARカウンターまでこしらえて
冷蔵庫と棚にしこたま酒を並べてるんです
挙句には
広島の旗艦店にも伝染して
つまり
我々の店は
meprhという洋服をきっかけに
ただ
誰かと楽しくやりたい寂しがりやの巣窟というわけです

今日も京都に通ってくれたお客さんが転勤して広島に移動となり
早速the 3Rd heimに顔を出してくれたそうです
京都にも広島から家族で遊びにきてくれたお客さんもいます
できることなら
そのままここで酒でも飲みたい毎日です

明日もきっと誰か顔を見せてくれます
洋服ももちろんですが
この店を楽しんでもらいたいと強く思います
そのためにはまだまだやらなきゃいけないことだらけ
京都と広島とやがて金沢とそして東京と
merphのメンバー全員で
真剣に考えていい時間を過ごせる”場所”を作り上げていきたいと思ってます

history of us

久しぶりに製作しました
まさか13年間作り続けることになるとは思いもしませんでした

このパーカの他との決定的な違いは
フードの設計です
クルーネックではなく
Uネックにフードが付いていること
そこにどんな役割があるかというと
フードが前に倒れるスペースが作られているという点です
フードのボリュームを出したい時
まず誰もが思いつくのは
フードをでかくすること
しかし
ただでかくしただけではフードは後ろに倒れます
そうさせないために
胸の方向へ倒れるスペースを作ってやったわけです
さらに
このフード
口が前ではなく上に向かって空いています
一度スタンドカラーとして立ち上がり
そのあと少し生地が余るようにフードが付いています
そうなんです
実は
フードは一般的なパーカより小さいんです

素材ですが
表面はさらりとしたコットン天竺
しかし
裏はと言いますと
滑らかなマイクロフリースになっています
こちらを表にするか
最後まで悩みましたが
この美しい裏をフードでちらりと見せる大人の選択に落ち着きました

カラーは黒とキャメル
どちらも生産数は18着です

お待ちいただいていた皆様
本日より
京都と広島の店頭に並びます

落葉外套

今年の京都の紅葉は例年より早いようです
私の出勤路の岡崎公園あたりや
自宅の背後の大文字山は
すでにかなり赤く染まっています

鹿ヶ谷通でお商売をされている方々の
朝の落ち葉掃除も忙しくなっていきます

そんな落ち葉の折り重なる色になぞらえてつけたカラー品番
“dry leaf”を冠したこのネガウールツイルのバルマカーン
実はanimaでもすでに出来上がっています
ちょっとバタバタとしていて
ちゃんと紹介していませんでした
遅ればせながら

紳士用のMR1120とは全く別物です
デザインもディテールも完全に違う仕上がりです
着丈バランスも少し短く
襟の大きさもコンパクト
ただ
裏地はこちらもオレンジのマイクロフリースを使用しています
防寒度は今年のトップランカーです

コートも続々と揃い
cassowaryに差し込む光と影も長くなってきました
もうすぐ秋も終わります
一年の早さは
何年生きても慣れませんね

シャツとシャンパーニュ

幾度となく書いてきましたが
春が苦手です
単純に季節としても苦手ではありますが
大体の私と同じ職業の人間は春という季節を嫌います

無論
merph的理由は察していただく通りです
年中コートを作っていたい男にとって
手数を増やすことができない春夏のデザインは試練でしかありません
しかし
美しい四季がある日本で洋服を作る以上
このわがままは通りません

苦手といえば
シャンパーニュも僕の歴史に縁のない酒です
汚い話で申し訳ないのですが
ビール党の私にとってシャンパーニュの味は
ビールをしこたま飲んだ後に白ワインを飲んで飛び出したげっぷの味…
その上やたらと酔っ払う…
お祝いでいただくことも多いこの悪魔の酒が嫌いでした
しかし
たった一本のシャンパーニュとの出会いが考え方を変えてくれました

『ルアレ デボルド』
僕が苦手とする下の奥でグッとたまるアルコール感を感じない
実に爽やかなシャンパーニュ
出来を語るのは嫌いです
ただ
単純にうまいと思ったんです

ドンペリやモエシャンドン、ヴーヴクリコくらいしか飲まずに
自分には合わない酒だと決めるのは早すぎました
シャンパーニュと言えどこの世にはたくさんの作り手がいるわけで
それを一括りにしてしまうなど
小さな会社で洋服を作っていて
自分がされてら一番嫌なくせに…
全くもって恥ずかしい考えでした

いい大人です
不惑ともいう区切りもとうに超えました
でも思うんです
今の世の中
40歳で達観できるほど物も情報も少なくないんです
だからジジイになっても迷えばいいんじゃないかと

さあ
そう言ってしまった以上は
シャツももっと色々やるしかありません
そうすれば苦手な春が楽しくなるかも

14年やっても
まだまだ未熟なデザイナーです
毎日絵を描いて酒飲んで
シャツのアイデアに『ルアレ デボルド』を探し続けます

 

霞む格子と天鵞絨

今年も素晴らしいグレンチェックを探し出しました
しかし
わたしの手元に届いたのは78m
この限られた大好物を
どの形に使うのか
ずいぶん悩みました

今年の冬用の生地の中でも
真っ先に購入を決めたこの生地を
cassowaryの片隅で寝かせた日々は三ヶ月
本当は他にも作りたかった形がありましたが
来年また
これに匹敵する逸材に出会えることを祈って
今回は2型に絞りました

そして昨日
ようやく一つ目の形が仕上がって参りました

MR4111  “bishop” C/#glencheck 
得意のカットソー工場で仕立てるコートクラスのローブです
我々がお願いしているカットソーの工場は
こう言った布帛とニットのコンビネーション作品を
非常に綺麗に仕上げてくれます
このところmeprhの作品に
このコンビネーションが増えてきているのは
紛れもなくこの工場のおかげです

仕上がりに全幅の信頼を置いているだけに
わたしの素材選びにもプレッシャーがかかります

考え抜いた末
選んだのはおそらくちょっと”外れた “素材です
しかし
このギャップというか
セオリーではないマッチアップにより生じるバランスが
最近のわたしの制作の一つの柱になっています

ケンピの混ざった生真面目なグレンチェックと
天鵞絨 のようなフリースファーの二律背反
うまく仕上がったと思います

早速わたしも1着購入いたします
紅葉の始まりから風の弱い冬の日に
今年のセカンドコートとして

わたしの し・ご・と

単純なものほど
merphの作品としては”価値”を求められる
だから
コートのような複雑な洋服を作るのとは
また別の難しさを感じている

以前こんなことを言われた
『複雑でインパクトのある服作りをするからこそ
シンプルなものを作って欲しい』
私の答えはいつも決まっている
『それなら僕以外にもできるでしょうからやりません』
ただのTシャツをいい生地使って作る
その人はそんなことを言っていたのだが
それはもはや僕らの仕事ではない
その昔
まだユニクロや無印がここまでではなかった頃は
その任務は私のような生地に目の利く洋服のデザイナーに託された
しかし
今やそう言った大きな会社がずば抜けた生地を
大量に買い大量に縫うことで
我々は到底でいないコストダウンを実現している
そこにわざわざちょっと高く作る必要がないわけだ
『縫製の質が良くないんですよ』
そう言った人もいた
これこそ無知の極み
一年中同じ場所を同じ人間が天文学的数縫い続けているのだ
そこに寸分の狂い無し
ユニクロだから縫製が悪いなど
一体何十年前の話しているんだ
天下の日本企業があそこまでなる間にそこを向上させないわけがなかろうに
これをファッション記者やらバイヤーが平気で言うから恐ろしい

そう言った古い世代の話は置いておいて
じゃあmerphさんはどうするのか
それは簡単な話
彼らのやらない非効率を
そう
もともとmeprhがやってることをやり続けるだけ
シンプルで質の良いものは彼らに任せて
こんなとこもっと手を抜けばいいじゃないか
って作品を作っていくだけ

MR4108
ウールのカットソーをチクチクしないように
同じパターンで裁断したコットン天竺を裏につけました
40/2のコーマ糸です
これで着用時のストレスは消えます
別のカットソーを重ね着してもいいんですが
設計の差で出る脇の不快感や縫製部のズレが表に影響するでしょ
それ
美しくないんです
このカットソーはそうならないでしょ?
素材が変わればパターンもいじります
去年とはまた別のパターンになってます
効率悪いです
でも
それが
わたしの仕事
わたしの
し・ご・と

だし巻きとバルマカーン

『京都は山に囲まれているから安全だよ』
日曜日の夕刻に店をのぞいてくれたオーストラリア人のカップル
おそらく僕の言葉を信じて夜中にクラブへ行ったと思う
本当に申し訳ない
こんなに京都で台風の攻撃を受けたことがなかったから
せっかくの旅行だし存分に遊べと言ってしまった
無事に東京へ向かえたことを祈る

この週末は科田が大事な用事があるため
土曜日の深夜に金沢をでて京都に向かった
おかげで台風の妨害を受けずに無事に京都に到着した
もし何時もの通り日曜出発だったとしたら
どこかのサービスエリアで車中泊だっただろう
こういう何気ない幸運に守られている人生ではある
それを与えてくれている何かしらのどなたかに感謝しなくちゃいけない

台風一過の昨日は
久しぶりに京都の気のおけない面々と酒を飲んで
福松のだし巻きをいただいた
料理にしろ
洋服にしろ
ちゃんとしたストレートを投げられて初めて変化球が生きる
緑茶割りでふわふわのだし巻きを食べながら
入荷からひと月足らずで25着売れた今年のmerphのストレートに乾杯した

秋霖

毎週末の金沢遠征
最後に見た夕焼けは9月24日だった
10月に入ってからは木曜日の往路も日曜日の復路も雨模様
徳光ハイウェイオアシスでしばし落日を眺める楽しみも奪われている

この秋の長雨が終わる頃
金沢ではカニの解禁を迎え
もうコートなしではいられない気候になると記憶している
そこに合わせてmerphの冬の衣は続々と店頭に運び込まれる予定だ

まずは
フードローブ ” bishop"が届くのではないかと思う
これはカットソー工場で仕立てている
布帛工場で仕上げたコートに匹敵する防寒性に対し
スウェットパーカに毛が生えたような価格で収めている

長年お願いしている工場に超特急でいらしているので
10月中にお披露目できると思う

金沢京都の往復生活でバタバタの2017年下半期
気がつけば
店頭でスタンバイしていたこの冬の作品の生地も全て消え去り
あとはmerphになって帰ってくるのを待つだけ
ということは
すなわち
春の制作に入らなきゃいけないということになる
時間が足りないと嘆く前に
無駄にしてる時間をなくしていこう

立派なことをここで書くのは簡単
思わず携帯に手を伸ばすのを我慢するのは至難
40代半ばにもなって
行動は小学生のまま

今日は台風なんだね
店番が自分なのを忘れていて
深夜に雨の北陸道を安全運転で帰ってきたのに
堺町六角ゴーストアベニュー
溜まった事務仕事を片付けながら
三杯目のコーヒーを淹れて
あと4時間久しぶりのcassowary