その知らせがパソコンの画面に公開されるのを
沢山の友人達がそれぞれの液晶画面の前で待っていた
そして遂に
7月9日午後11時半頃過ぎ
待ちに待った報告がふわりと画面に更新された
『仕事中だったら俺は行かへん』
僕らの台所の亭主はそう言っていた
寂しがり屋のお母ちゃんはきっと悲しむ
この子はそう思ったのだろう
定休日の月曜日の朝に動き出し
定休日の月曜がもうすぐ終わる頃この世界に現れた
結局
週に一度しか休みの取れない
予約の取れない料理屋の亭主は
最初から最後までを目撃できた
3232g
気遣いの出来る優しい男になるとお父さんの友達はそう思う
おめでとう
ようこそ試練の時代へ
早くいじくりましてやりたいが
まずはさんざん親父とお袋さんに愛でてもらうべきだ
手伝いが必要な頃おじさんは会いに行こうと思う
今日は写真は無し
何かのせようと思ったが
こんなすばらしい時に載せる写真が見当たらなかった

信じたくないが
今日
蝉の鳴き声を聞いてしまった
動揺した
夏が来てしまった
乱れる心をなんとか落ち着かせるために
こう考えた
『これで夏の終わりが一日近づいた』
今日も納前到着
今回の制作の中で最もエクスペンシブな生地
麻とウールの大柄ヘリンボーン
新作のショールカラーコートの他に
トレンチコートをcassowary&KAMMERに加え
吉祥寺ROL様のみのリミテッドで制作
これがまた
すこぶる男前
多くの方の目の色を変えさせる自信をもっている

今日は朝からいよいよのお知らせがもう一つ

蝉が鳴き夏が始まったと思った15分後

友人の嫁さんの陣痛が始まった

もうすぐ愉快な仲間が増える

大きくなった時

その年初めて蝉が鳴いた日におまえは生まれたんだぞ

そう教えたやろうと思う

長い一日になる

ドタバタの両親の代わりに大事な今日の事を

しっかり記憶しておく

彦星がノルマを果たした翌日
7月8日
友人が言っていた
『今日から彦星は一年間自由だ』
彼はもうすぐ2度目の結婚をする
日曜日だが今日も順調に仕事中
そろそろ眠くなる14時クオーター
見慣れた女の子が扉の前に現れた
お隣のピッツェリアの店員さん
『これ よかったら』
オーダー間違えたとの事
田和と二人迷わず両手を差し出した
我が社はここのピッツァの虜
メニューもピッツァだけで20種類くらいある
僕のお気に入りは
『マルゲリータ』『カプリチョーザ』
そしてお店の名前を冠した
『シンパティア』
味もさることながらお値段がまた財布に優しい
ビールを窒素のごとく浴びる僕が満足しても嫁さんに怒られないお会計
打ち合わせや来客があるといつもお世話になっている
事務所から徒歩13秒
『シンパティア』
北山に来るなら7時までKAMMERで気をぬいて
その後ワインをあおってピッツァはいかが

寝不足
昨夜の5時間に渡る雷フェスティバルのせいで5時まで眠れなかった
11時半まで夜更かしした息子は窓の前にちょこんと座り
ブラインドの隙間から走る紫の閃光に
『おお〜!』と興奮しながら手を叩いていた
十数発の雷が落ちた頃
ようやく息子も堕ちて行った
おかげで今日は眠気に仕事を邪魔された

何度コクリと首をもって行かれたか

相変わらず北山の事務所にはインキュバスが沢山巣食っている

今日も納前が上がって来た

すごく暑苦しいコートが早くもハンガーラックに鎮座

北山の店が次第に秋になって行く

春夏の途中から始まったKAMMER

秋冬からこそ本当のはじまり

緑の絨毯に白木のラック

そこに並ぶ尾州の生地にてmerphした鎧のごとき冬の外套

全コレクションが揃う日が

待ち遠しい

事務所に秋冬が届き始めている
納前
僕らはそう呼ぶのだが
納品前に数着
出来映えをチェックするために本納品に先駆け送られて来る
問題はなかった
merph2度目のシーズンがもうすぐ始まる
次第に大人の服になって来たと思う
これから
より大人っぽく
よりアカデミックになって行きたいと思う
merph
ヨーロッパ諸国の様々な言語において
『形を成す』事に関わる単語の始祖たる言葉
formula
これもmerphから派生した言葉
弊社のレーベルformulaもmerphからの派生である
うまく整っている
cassowaryはまだまだ夏の作品が売れている
それに届いたと言えどまだ数枚ずつ
そう言うときのためにここがある
今週末から北山で少しずつmerphの秋物を展示開始
梅雨を秋の服を見て無理矢理意識の外へ持って行く

ギリシャの酒
メタクサ
最近じゃこの美しいボトルも手に入らなくなった
ぶどうの味が強いブランデー
今は無きアキラのバーでよく飲んだ
懐かしくて手に取ったら
ほこりが舞った
おそらく最後にこいつを拭いてやったのは1年前の僕だ
昨日のcassowaryは静かな一日だった
だからいろいろなところを掃除した
大学生の時
新築マンションのフィニッシュ掃除のバイトをしていた
日当¥8,000
2カ所廻ると¥16,000稼げた
10人くらいの仲間で滋賀から京都のマンションを
おばちゃんの運転する軽トラに揺られて掃除に向った
その10人の中で常にレギュラーで声がかかったのが
僕と高校からの同級生『生田』だった
理由はおばちゃん曰く
『あんたら掃除の仕方とするところがよく分かってる』
とのこと
そりゃそうだ
年末の大掃除は奇麗好きの両親の元
お年玉という人参をちらつかされ
必死になって掃除した
そのおかげで並のおばちゃんより働けた僕と生田は
このバイトで月に7日程の労働で
10万くらいを稼いでいた
あの金は何に消えたかの記憶は
無い
今日は北山に居る
さっき福松の近松夫妻が遊びに来てれた
嫁のユリちゃんのお腹はいよいよ満タン
現時点で3600g
来週 近松家は3人になっているかもしれない
楽しみだ
さっきまでやんでいた雨がまた降り出した
今日はずっとこの調子
北山の事務所ももう4ヶ月
少しほこりも溜まっている
ここも少し掃除してみる