堺町六角カーディナルショック

10月の上旬
まず最初に届いたのこの淑女用のバルマカーンでした
まだこの時はこの赤いコートがこれから巻き起こす
大爆発を想像もしませんでした

最初に購入してくれたのは
大学の同級生の奥様
実物が上がる前から生地を見て絶対に買うと決めてくれていました
分納で2、3枚ずつ届く赤いコートを
店頭の淑女用トルソーに着用させ
清水の舞台から
一度天高くジャンプしてから
飛び降りる覚悟でオーダーした6反分の赤いコートが
順調に全て売れてくれることを祈ってさえいました

しかし
期待と不安はやがて後悔へと変わります
この赤いコートを見た女性が次々と店に飛び込んできて
一週間半で全て売れてしまいます
焦りました
それと同時に
生産数を決断した時の肝の小ささを後悔します
次に届くフード型を紹介しお待ちいただくも
入荷数に対して数日で3倍のご希望者がエントリー
結局フード型も10日ほどで完売してしまいました

そこに出遅れて届いた紳士用
さすがにこちらはゆっくりと
しかし確実にその数を減らしていきます
ずっと堺町側のガラス面にフードとバルマカーンを3サイズ全て並べ
行き交う人の視線を奪ってきました
やがてサイズ完売が始まり
それでも同じサイズを3枚並べて赤い壁を保ってきました
しかし
本日ついに
その三枚ずつの壁の一角があいてしまいました

今回この赤いメルトンで製作したコートの枚数は
紳士淑女2型ずつで56着
それをネットショップも使わず当店だけで販売し
ついに後5着まできました

卸をやっていたなら展示会でこう言われたでしょう
『こういうの作りたいのはわかるけど実際売れるのはもっとベーシックな。。』
いつも思っていました
洋服を売る人間たちのほとんどが
お客さんをなめています
私はここで長年お客さんと接してきて感じました
バイヤーやPRより
お客さんの方がずっと面白い服を求めていると
私も卸に頼ってつまらないバイヤーやPRのいいなりになっていたら
もう今頃洋服なんか作っていないでしょう
でも
私にはこの店があり
口だけのバイヤーやPRと違い
真剣に洋服と向かい合ってくれるお客さんがいます
そのおかげで
こんな赤いコートを作るのにもうビビらなくなりました

2019年
始まったばかりですが
すでに2019年の11月と12月の納品まで頭はフル回転です
洋服業界の悪しき習慣から解放されて
merphはこれからレッドブルを点滴し続けてるように翼を授かって羽ばたきます

まだ見ぬmerph

merphという言葉は『形をなす』という意味を持ちます
恥ずかしながら
私は洋服の歴史や伝統にあまり興味がありません
コレクションも見たことがないし
何をしているのかよくわかりません
私のしている作業は
一般的に理解できる洋服の種類の中で
自分の作りたい形を描き
それを技術者とともにmerphという洋服に仕上げているだけです
一番大事な作業は紙に絵を描くことです

ロゴマークやシンボルマークでしか区別できない服ではなく
merphの服だと一目でわかる服を作りたいと思っています
しかしそうなると
シャツやカットソー、パンツでの主張はかなり難しいんです
そこがこれから私が挑まなきゃいけない大きな領域です

とはいえ
ひとまずはこの得意のコートというナワバリで
思う存分制作をやり切って見ます
まだ見ぬmerphを私自身も楽しみにしています

あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます
弊社にとって14回目の新年です
あと一年で15年という節目を迎えます

思い返せば
なんとも苦しい歴史でした
しかし
昨年ようやく自分にあったやり方にたどり着き
今まで愚かさを痛感しつつ
しっかりと現実を受け止めて
また新たな決意を持って一歩踏み出しました

そんな2019年の抱負は
『何もしない!』
これまで男のメンツで店舗を増やそうとしたり
他の業種に手を出そうとしたりして
自ら首を絞めてきました
そんなに器用じゃないのに
そんなに中途半端を許せないのに
バカでした
だから今年はシンプルに
merphをたくさん作ってcassowaryで発表します
昨年1年間で証明された
『この店はまだ一度も十分な在庫を持って営業したことがない』
という事実
あれだけ売上記録を更新し続けたにもかかわらず
11月からずっと
『完売しました、すみません』
といういつものセリフを毎日唱えています
『まだmerphは足りない』
それを受け止めて
本気で2019年を過ごしてみます

平成最後の正月
そして新しい元号が始まる年
自由になったmerphを
本年もよろしくお願い致します

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