事務所に秋冬が届き始めている
納前
僕らはそう呼ぶのだが
納品前に数着
出来映えをチェックするために本納品に先駆け送られて来る
問題はなかった
merph2度目のシーズンがもうすぐ始まる
次第に大人の服になって来たと思う
これから
より大人っぽく
よりアカデミックになって行きたいと思う
merph
ヨーロッパ諸国の様々な言語において
『形を成す』事に関わる単語の始祖たる言葉
formula
これもmerphから派生した言葉
弊社のレーベルformulaもmerphからの派生である
うまく整っている
cassowaryはまだまだ夏の作品が売れている
それに届いたと言えどまだ数枚ずつ
そう言うときのためにここがある
今週末から北山で少しずつmerphの秋物を展示開始
梅雨を秋の服を見て無理矢理意識の外へ持って行く

ギリシャの酒
メタクサ
最近じゃこの美しいボトルも手に入らなくなった
ぶどうの味が強いブランデー
今は無きアキラのバーでよく飲んだ
懐かしくて手に取ったら
ほこりが舞った
おそらく最後にこいつを拭いてやったのは1年前の僕だ
昨日のcassowaryは静かな一日だった
だからいろいろなところを掃除した
大学生の時
新築マンションのフィニッシュ掃除のバイトをしていた
日当¥8,000
2カ所廻ると¥16,000稼げた
10人くらいの仲間で滋賀から京都のマンションを
おばちゃんの運転する軽トラに揺られて掃除に向った
その10人の中で常にレギュラーで声がかかったのが
僕と高校からの同級生『生田』だった
理由はおばちゃん曰く
『あんたら掃除の仕方とするところがよく分かってる』
とのこと
そりゃそうだ
年末の大掃除は奇麗好きの両親の元
お年玉という人参をちらつかされ
必死になって掃除した
そのおかげで並のおばちゃんより働けた僕と生田は
このバイトで月に7日程の労働で
10万くらいを稼いでいた
あの金は何に消えたかの記憶は
無い
今日は北山に居る
さっき福松の近松夫妻が遊びに来てれた
嫁のユリちゃんのお腹はいよいよ満タン
現時点で3600g
来週 近松家は3人になっているかもしれない
楽しみだ
さっきまでやんでいた雨がまた降り出した
今日はずっとこの調子
北山の事務所ももう4ヶ月
少しほこりも溜まっている
ここも少し掃除してみる

夕方
日が落ちたら気持ちいい風が吹いた
cassowaryの入り口を開けて暫く書類を作ってから
ふとハンガーにかかったカーディガンMR4004を見た
『こんなとこにボタン付けたっけか?』
近づいてみるとそれは黄金虫
それも髑髏づら
このままほんとにボタンになって頂きたいと思うほど美しかった
少し暇になったからギターを弾いてみたが
12弦は酷くチューニングが狂い
DM7>Aadd9のあの美しい音色が呪いにかかった
チューナー無しで僕にどうのこうの出来ない領域
残念だがギターによる気分転換は断念し
デスクに向った
来週の水曜日はチューナーを忘れない

それにしても昨日の昼は暑かった
用事があって堀川通から北へ向ったが
大きな通りの上にばっくりと開いた空から
憎しみと見分けがつかない強烈な日光が降り注いでいた
おかげでちょっとした熱中症みたいな状態になり
頭痛と寒気が暫く仕事を妨げた
昨日の暑さは今日はなりを潜めた

ただしもの凄い潤いを空気中に残して

気温のわりに汗は止まらず滴り落ちる

一年でもっとも不愉快な京都が今日である事を祈る

これ以上にはなってほしくない

自転車で通勤していると

駐車中の車のアイドリングに目眩を覚える

行政は大きな看板で

『アイドリング ストップ』

と努力する傍ら

その建物裏で長蛇のタクシー乗り場を併設

クーラーを効かせまばらに乗り込む役所帰りの人々を

それぞれの方法で時間をつぶし待ち続ける

或る者は弁当を喰らい

或る物はクロスワードパズルにかじりつき

或る物は昼下がりの夢の国へ

私が暮らすこの街は

かの有名な環境に関する議定書が読み上げられた京都市である

機会があれば一度おこしやす

加茂別雷神社
(カモワケイカヅチジンジャ)
通称
上賀茂神社
この雷の神様との付き合いは大学時代から
ここのバスロータリーからスクールバスに乗り込んで

大学まで通った

結婚式もここで挙げたし

息子のお宮参りもここにした

これから暫く上賀茂で仕事もする

長い付き合いになりそうな雷親父に

一度引越の挨拶に行かなくてはと思ってはや4ヶ月

未だに手を合わせる事が出来ていない

週があけたら昼の休憩にお参りに行こう

ついでに昼飯を今井食堂で喰らってやる

昨日

友人が北山に来てくれたから

彼の新居を拝みに北山から船岡山まで歩いて帰った

途中目に飛び込むのは若かりし日々の思い出のランドマークたち

昼夜を問わずレコーディングに明け暮れたユウイチのマンション

元旦の明け方シェパードに襲われて飛び込んだ救急病院

親友が大風邪で入院して

見舞いに行ったら死神と間違えられた病院

店員がずっと喧嘩している御旅飯店

ライスを大盛りにすると量が4倍になる大徳寺前の食堂

お世話になっても居ないのになぜか覚えている耳鼻科

油断したら涙がにじむ

慌ただしいこの頃の生活とは正反対のやりたい放題の日々

あんな時間を過ごせたのは親のおかげだ

偉そうな事ばかり言ってろくな感謝もせず

今1人の子供の親になって思う

あの頃自分をぶん殴りたい

堕落した日々だったが

手に入ったものも沢山あった

その一つが今の仕事

これをしっかりこれからのLIFE WORKへと昇華させて行く事が

せめてもの

そして唯一の親孝行

それが出来る様になるまでは

現在1歳4ヶ月の息子を身代わりにしておく

 
月曜日には名古屋からじじいとばばあが孫に会いに京都へやって来る

ばばあのリクエストで夕食は福松

しめ鯖が旨いと知ったじじいは俄然やる気だ

2泊3日の延命治療

これで暫く元気に暮らすだろう

そうしている間に親孝行の準備を進めて行く

水曜日
堺町六角近辺は定休日
人通りも少ない昼下がり
『明日から雨だしな。。。』
昨日 帰り道で前を塞いでいたサラリーマンがそうつぶやいていたが
今のところ太陽も覗くうすら晴れ
気温と湿度も過ごしやすく
さっきまで少し外で椅子に座りボーとしていた
自転車にまたがり出かけたい気分になったが
僕には大事な店番がある
10年以上乗り続けているルイガノのCASPER
大したメンテナンスもしないまま乗り続けたせいで
24段のギアは1つしかまともにはまらなくなってしまった
そろそろ少し入院させようかと思う
2月末の引越以来
晴れた日はこの重たいCASPERで北山を往復している

往きは性格の悪いはっきりしない上り坂

そりゃもう大変だ

だが帰り道はすこぶるラクチン
自身の体の重さと合わせ
漕がずしてスピードが出る
鴨川のほとりをカップルの邪魔をしながら北山から北大路まで下ったあと
下鴨の金持ち通りの家々を
『金があるのにもったいない』
と負け惜しみに近い建築批評を心の中で繰り広げ
今出川に出たあとは御所の隣の信号の無い道を丸太町まで転がって行く
丸太町まで来ると
ここからは点在する寄り道スポットの誘惑との格闘である
まずはスペインバルsala de ester
ここのハートランドのスライディングタックルをかわすと
次はベトナム対象のショルダーアタック
それを上手くかわしたとしても
次はストッパー福松のファール覚悟のディフェンスが待っている
そのうしろにはゴールキーパー豚串風味堂
近くて遠いゴールマウス
それらの誘惑ディフェンスをかわすには
メッシのドリブルクラスの意志が必要だ
昨夜はsala de ester とベトナム大将のとこが定休日
福松と豚串が満席
なんなく家までたどり着いた
ところが
そんな日に限って息子は北山の爺ちゃん家
ゴールを決めたのに無観客試合だった
今日はcassowaryの番人が終わり次第
家にとんで帰って息子と遊ぶ
最近
よく喧嘩を売られる
思い通りにいかないと
僕の前に仁王立ちし
前のめりになってつばを飛ばしながら怒鳴り散らす
『ドゥラバラリュリャジュシッ!ダッ!ヂュシッ!』
訳すと
『カスタネットを返せ!壊れたチョロQは貸してやる!』
指吸いするくせに生意気だ