自分で創りたいものがわからなかった
大学の頃
シャツが大好きでいろいろなシャツを着まくった
古着から強烈なデザインの物まで
その反動だろうか
以後まったく興味がなくなってしまった
洋服を創る様になってから
それは加速した
やりたい放題できるコートやジャケット
自分のやりたい事がばっちりはまったカットソー
シルウェットをとことん奇麗にしたパンツ
それぞれはっきりと目標にする着地点があったから創りやすかった
ところがシャツは飛ぶ事すら出来ないままでいた
僕にとってはシャツは既になぶる事の出来ない物で
誰が創っても面構えは変わらないと感じていた
故に僕の鉛筆はなかなか滑らなくなってしまった
ところがこのところ
少しシャツに対する身構えがかわってきた
僕の見つけた構え方は
『merphの隙間を埋める』
これだ
普通の事かもしれないし
今さらの事かもしれないが
今までの僕の洋服の創り方からは生まれて来なかった発想だった
これに気が付く原因もやはり店でのコミュニケーション
店頭でお客さんからリクエストされ続けた薄手の羽織り物
コートやジャケットで創るには少し僕にとって味気ない物
そこでふと
シャツをその立場まで持ち上げるのは面白いと気が付いた
それから創り始めたのは所謂CPOジャケットの様なシャツ
顔立ちがジャケットに近く
ただし資材とベースパターンはシャツ
今シーズン創った4型は春になればジャケットやコートの替わりになる
製作にしっかりした着地点が示されたおかげで
出来上がったものの売れ行きも激変した
洋服の制作者として最後まで苦しめられたシャツという難関に
8年かかったがようやく希望の光がさした
来年の春夏のシャツは更にグレードアップする
気付いたやり方を技術的に更に昇華させる
パターンとディテールを詰め直し
しっかりとした型数をリリースする予定だ
生地もなかなか面白い物が揃ったし
刺繍やプリントも施す
かつて無い型数のシャツをスワッチに載せる
展示会ごとに何かしら変化を付けていかなくちゃいけない
ただ新しい『merph』を出すだけではなく
新しい価値を示さなくちゃいけない