正鵠を射る

『これでいいか』
をやめた
『これじゃなきゃダメだ』
を貫いた
すると
洋服は今まで以上に美しく仕上がるようになった

時々言われる
『昔みたいなちょっと奇抜な服はもうやらないのか』
そうしようと思ってああいう服を創っていたのではない
自分の中でその時創りたい服が
たまたまそういうものだっただけ

今のmerphはこういう服を創る
期待を裏切ることもあるかもしれない
でも
時々期待を上回るかもしれない
どちらにしろ
今私が創っている服は
『これじゃなきゃダメだ』
そう思って創っている

どこかにそんな私の服を気に入ってくる人がいる限り
マシンガンのようにヒット作品を探すのではなく
正鵠を射抜く作品を創りたい

azure

とある理由で
次第にmerphのイメージカラーとなりつつあるこのロイヤルブルー
一年に一つはこの色に染まった作品をリリースしたいと思っている

今年の青き衣は
フレアシェイプのバルマカーン
選んだ生地は
スパンナイロンを使った高密度のタフタ
雨を見事に弾き飛ばす

裏にはわさび色の細いパイピング
青い衣の裏のパイピングはいつもこの色と決めている
merphの洋服を作る際
心がけていることは
買ってくれた人が
それを着ていないときにも満足できる作品であること
だから
裏地やパイピングの仕上がりやカラーにもとことんまで悩む
これは
特別なことでは無いと考えている
デザイナーと冠された以上
当然の責務

例えば
食事に行ったレストランで
コートを預かってもらうとき
他の洋服に紛れたあなたのmerphが
ちょっと誇らしく見えるように
そんな瞬間も洋服を作る上で
私が仕事をしなきゃいけないと思っている

新しい風

『縫いにくかった。もうこの生地は持ってこないでくれ』
工場からじっとりとそう言われた
一見
何の変哲も無いこの紺色の生地
実は四方八方にゴムのように伸びる
それでこんなキリッとしたパターンのジャケット縫わせるなんて
発注という名の嫌がらせだった

でも
ご覧いただきたい
この仕上がり
文句を言った人たちの仕事じゃ無い
文句を言う奴は
それを言い訳に適当な仕上がりを当然のような顔で納めてくる

大人ってのは
意地で生きていくものだ
『俺にはこれしかできない』
なんて台詞を吐きながら

色々簡単に世の中を渡っていく虎の巻が
頼んでも無いのに朝からSNS経由で飛び込んでくるけども
そんなもの信じてヘラヘラしてても
手に入らないものってのがあると
そう思っている

いつも現時点に満足していない頑固者は
きっと時代がどんな変化をしてもどこかで黙々と仕事をしてる
卑怯な成功者より
そう言う人たちを見習いたい

隆起

洋服というものは布でできている
だから
地面におけばぺたんこになるものだ
特にカットソーとカテゴライズされる
ニット生地をカットし縫製したものは
袖もまっすぐでパターンも二次元的なので
地面におけば重力に素直に従い地べたに沿う

ところが
我がmerphのパーカは隆起する
いたるところに走るRの線が
地面に平伏すことを許さない

誰が作っても同じような仕上がりになるパーカ
そこで圧倒的なアイデンティティを獲得する嫌味
これぞ我らmerphの目指す製作

製作の法則

この生地を
このデザインに使うか否か
かなり悩んだ
これだけの着丈のシャツに
縦横24cmピッチの大きなチェックで柄合わせをすると
当然用尺は3m級になる
しかし
だからこそのインパクト
それを諦めたくなかったから
思い切って工場へと生地を送り込んだ

製作の法則
ケチらず思い切ったときに
やはり納得の作品は仕上がってくる

現在店にある作品の中で
活躍する時期が一番遠いこの麻の作品が
試着一番人気である

ちなみに
これに合わせたくて急遽
白いワイドパンツを製作することになった
今度こそ
白いパンツ
皆様にも挑戦していただきたい

weiとmerphと春待ち二月

まだ雪のちらつく中
はっきりと春へシフトし始めた2つのmerphの部屋
その中で好調なのがweiのラバープリントのスカート
このアイデアには同じ洋服作りの立場から嫉妬した
シワになったレースの上にベタ塗りでラバーをプリントして
それを割いてランダムなストライプのように仕上げている

この快進撃のスカートを迎え撃つのは
merphの殿堂入りzip-up parka
merphとwei
双方のレギュラーデザインでやがてくる春を待つ