チューリッヒの悪夢

スイスでルックブックを撮影することになり
撮影のスタッフとチューリッヒへ向かった
現地で手配したモデルさんはまっすぐな金色の長い髪の毛に
少し冷たい目をした超美人
緊張しまくったが話しかけてみると
見た目に反してものすごくよくしゃべる陽気で気さくな人だった
その上彼女はデンマーク人で
同じくデンマーク人の彼氏の心臓外科医について
スイスに移住してきたらしく
僕がデンマークに友達がたくさんいて
コペンハーゲンにも行ったことがあると話すと
故郷の話に嬉しくなったのか
今日彼が迎えに来るから
一緒に食事に行こうと誘ってくれた

彼は僕と同い年
メガネをかけて素朴で優しい顔をしていた
オススメのレストランはスイス料理ではなかったが
アンティークの家具に囲まれた落ち着く店で気に入った
お互いの仕事の話
僕の洋服の話
コペンハーゲンの話
それから今住んでいるところが京都だと話すと
彼らの目が輝いた
やはりどこの国の人にとっても京都は魅力的な街らしく
来年必ず行くから案内してくれと言われた

うまい肉料理でワインを飲み
その後一軒賑やかなバーに行って
得体の知れない無色透明の酒を何杯か飲んだ
明日は午後から手術だというのに
大丈夫なのか?
そう聞くと少し彼の顔色が変わった
興ざめなこと言ってしまったと謝ろうと思ったが
すぐにまたにこやかになり
明日の朝食も一緒に取ろうと誘ってくれてた
お言葉に甘えてよろしく頼むと握手をして
朝10時に待ち合わせしてその夜は別れた

朝は恐ろしくすぐにやってきたが
恐れていた二日酔いもなく
遅刻せず待ち合わせの場所に着いた
彼らはもうそこにいた
大きなインテリアショップの併設カフェで朝食を食べた
その後
勧めてくれた展望台に登ることになり
上から僕らを探してくれと言われたので
最上階から下を見ると
さっき帰り際にインテリアショップでこっそり買っていた
ブルーのペーパーナプキンで
大きなスマイルマークを作って手を振っていた
照れ臭かったけど嬉しかった
彼らのおかげで何も計画していなかった撮影以外の時間も
思いがけず楽しい時間となった

滞在は10日間で撮影は3日で終わったが
僕はアンティークのボタンや生地を探してしばらく残っていた
その間も何度か彼らは食事に誘ってくれた
心強い案内役を手に入れたおかげで
収穫は予想以上のものになった

しかし楽しかったチューリッヒの旅は
ある夜一変する
帰国を三日後に控えた深夜
ホテルで荷物を整理していると
誰かがドアをノックした
スコープを覗き込むと
一瞬見間違えるほどの荒んだ姿で
怯えた様子をしたモデルの彼女が
目をぱんぱんに腫らし
そこに立っていた
とりあえず中に入れてはみたものの
泣きじゃくって何を言っているかわからない
暖かいお茶を飲ませて落ち着かせる
15分か30分だったかソファで小さくなって座っていた彼女が
小さな声でこう言った
『彼が殺された』
そんなセリフ実際言われてみると
冗談にしか聞こえないものだ
拙い英語で必死に話をすると
彼はある心臓の新薬の欠点を見つけ
それを暴露しようとして
学会の直前に殺されたらしい
ハートが四つに割れたマークの製薬会社
その会社の心臓の血流を促す薬が
心筋に大きなダメージを与えることを彼は見つけてしまった
そのすべての証拠の隠し場所を留守電に残して
彼は昨夜
雪の降るチューリッヒの街の路地裏で
数人の男に強盗を装い殺された

彼女も狙われている可能性がある
だから証拠と一緒に僕のホテルに逃げてきた
友人や仕事仲間の家も危ない
実家はデンマークだ
だから旅行中の僕のホテルが一番安全だ
警察に行こうと諭すが
警察にも手が回っているからダメだという
そして彼女はとんでもないことを言い出した
明日開かれるその会社のパーティーに忍び込み
彼が残した証拠を来場するマスコミや
医療関係者に配るから僕に手伝って欲しいと
泣きながらも
ものすごく怒りに満ちた強い目で頼んできた
恐ろしかった
でも
彼の無念を晴らしたい
その思いが震えを止めた
僕は頷いた

引き受けたのはいいが
忍び込むにも僕は日本からの渡航者
彼女は顔がわれている
どうやって忍び込むのかと聞くと
まず僕の髪の毛を後ろで束ね
黒ぶちのメガネをさせて
彼の同僚の中国人医師のIDを手渡した
そこにある顔写真
確かに雰囲気は似ている
完璧ではないが欧米の人間にはすぐにわからないかも知れない
僕はこれでいけるだろう
問題は彼女だ
あまりにも彼女は美しく目立つ
明日では太るにも時間はないし整形もできない
すると彼女はカバンからハサミを出し
バスルームに向かい
長く美しいかった金色の髪の毛をばっさりと切り落とした

という
夢を見ました
スイスで製薬会社がらみの医療サスペンス設定
展望台でのエピソード
ハートマークが4つに割れたシンボルマークのデザイン
我ながら自分の脳みその妄想力と
それを事細かに覚えていたこと関心しつつ
寝ている間ではなく
起きている間にもっと働け我が脳みそよと思いました

本日
その脳みそで考えた
新作トレンチコート
入荷します

 

 

 

ジャケット+ベスト

まず最初にお詫びです
トレンチコートは明日以降に届きます
cassowaryに届いたらブログやfacebookにて
ご案内させていただくつもりです
すみませんがもうしばらくお待ち下さい

ですがこちらは届きました
ジャケットとベストを1つの洋服にとじ込めた
レイヤード仕様のジャケットです
検品が終りましたので
今から早速店頭へ並べます
前回のmonk jacketに続き
縫製の上がりは溜め息ものの美しさです

ぜひ店頭にてご覧下さい

京都出張

DSCN1017

春物の新作の入荷が続く3月前半
昨日ご来店して頂いたお客様にも満足して頂き嬉しく思います
そんな店頭が変化し新鮮な気持ちの中
今週 金曜日と土曜日の2日間cassowaryにて店番です
同じ路面店でもcassowaryとammonでは違いがあると思うので
新鮮な気持ちでお仕事をする事ができるかと思います
もちろん同級生の店長吉川と一緒に店番になります
4日の夜は京都に1泊
出張気分
京都の皆様 2日間
真面目に店番しておりますので
お時間ありましたらお越し下さい

続々と到着予定

明日はこのジャケットがcassowaryへ到着予定です
共生地で製作しているパンツはもう少し先になりますが
久しぶりのセットアップでも使える作品となります

生地は少し艶のあるウールのトロピカル
アンコン仕立てで着用感の軽いカジュアルジャケットですが
生地のもつ上品さに加えて
ベストが重なったレイヤードデザインによって
品格ある佇まい手に入れていると思います

またmen’sのトレンチコートも明日到着の予定なので
お時間ございましたらぜひ覗いて下さい

右から二番目の白いグルチッチ

カウンターで温かい珈琲を飲みながら
地味な作業が続くこの頃
いろいろな資材を選び手配して
サイズが合わなければ手作業で改造していく
手のひらに豆のできる日々
洋服の制作現場はかくも地味なものである

吹雪のスタートとなった三月
さあ春だと気合を入れた矢先の白い礫
以前も四月に降雪があった京の都
スギ花粉も相まって
なんだか非常にやりづらい日々が続く

本日は新しいカテゴリーへの挑戦を始めるため
午前中から打ち合わせ
果たしてうまくできるだろうか
じっくり話聞いてこよう
終わったらまたカウンターに戻って
定位置(右から二番目の白いグルチッチ)で珈琲を飲みながら
長すぎるファスナーのムシをむしり取る

 

 

雪とともに3月

3月1日
猛烈に寒いです
昨夜
京都に突如降り始めた季節外れの雪
幸い積もりかけた所でやみました

今また降って来ました….
なんという3月のスタート
気分は春に切り替わりやる気も充実しているのに
出鼻をくじかれました
ですが空を睨んでも何もならないので
しゅくしゅくと春を開始して参ります