ミレニアムな亡霊

どこかしらで
我々2000年代にデビューしたレーベルは
『ミレニアム世代』と呼ばれるとか呼ばれないとか
私は2000年に先輩のレーベルの立ち上げに参加し
2005年に自身のレーベルを立ち上げまして
つまり2回ミレニアムなわけです

2000年の東京は
今よりもっと物質的で
主観ですけど
野望の始発駅だったと思います
主観ですけど
そんな東京の
さらに原宿というカオスタウンの
私の働く事務所兼ショールームから一つ角を曲がると
そこにはデニムのフルカウントがありました
そこで偶然大学の先輩のとある野心家が務めてまして
記憶は曖昧ですが
挨拶をしたのかされたのか
そこからその後24年続く呪いのような腐れ縁が始まりました

ある日
『わしらフルカウントから独立して自分の服始めるし』

展示会のインビテーションを渡されました
今思い返せば
『自分の服を創る』ということを最初に意識するきっかけは
この時だったのかもしれません
会場は確か、、、
代官山の路地裏の2階の小さなレンタルスペース
もちろんそれまでに展示会という場には足を運んでいました
でも自分と同じ年代の
さらに自分と同じ大学に通った人間が
自分の服を創り始めたことは
強く私に突き刺さりました
よく賢い人たちからこんなことを聞きます
『将来を見据えて計画的に目標を設定してそれを実現していきなさい』
私の人生はそうはいきませんでした
21歳で踏み入れたこの世界で
想像以上に重要な仕事に携わり
そのまま日々の成果を必死に積み重ねて生きていました
そう言う中でこういう何人かの先人が見せつける”刺激”に
焦りのようなものを感じ
やがてそれが自分の中にある野望だと気がついて
私も走り出し
そして今に至ります
偉そうなことを言う立場ではないですが
計画に振り回されるより
人に振り回される方が私の性分には合っていると思っています

この秋冬に
TALKING ABOUT THE ABSTRACTION が復活します
私を振り回したミレニアムな亡霊が蘇ります
仕入れはしませんが
2000年代に覚悟を決めて走り続けた仲間の帰還を
心から祝福したく思います
代官山の小さなレンタルスペースで初めてみた
TALKING ABOUT THE ABSTRACTIONの服
その後少しの”いとま”を挟んでまた走り出しました
時代に合わない燃費の悪い車に乗って
排気ガスをばら撒きながら
我々はやはり
洋服を作って進んでいきます