chase the shape

よくどういう時にデザインをするのか
どうやってデザインをするのか
という質問をいただきますが
これが皆様が思うような素敵なお答えができないのであります

さあ
そろそろ次の服を作らないといよいよまずいぞ
となった時に
 A4のコピー用紙にあてもなく襟元から絵を書き始めます
まずはいつもシンプルななにかを描きます
描いてるうちになんだか脳の中に線が見えて来ます
直ちに目をつぶって形にしてみます
そしてそれを脳裏に焼き付け
バッと目を見開き
一気にハンガーにかかった状態の絵にしていきます

最初はシャープでザッザッと何本もの線を
ここら辺かというところに描いてみて
その中に決定した線を清書します
デザインに神様なんかいませんし
神様も好き勝手やってるおっさんのところに降りてくるほど暇じゃないでしょう
産業革命のイギリスを舞台にした物語から
トンネルを抜けた途端に一気に広がったランドスケープからインスパイアなんてのは
私に限っては起こりません

ファッションという言葉の世界に入ると
そこは着る側の世界なのだと思います
洋服をどう楽しむかの世界
そこに最初から意識を伸ばして洋服を作ることは
我々のような小さな作家がやることではなく
大きな企業の机の上が起源の服だと思います
だから不特定の第三者との関係を断つことが必要でした
そんな理由から取材を拒否しています

そういうとすぐに
批評されるのが怖いのかなどと攻撃されますが
まず
洋服のジャーナリストに批評できる資格のある人間などいないと思っています
例えば
災害やテロの評論家というのは
多くが元そのスペシャリストであり
専門的な知識と経験に基づき
物事を批評します
しかし
洋服の評論家やジャーナリストの中にほとんど
この世界で洋服を作ったものはいません
そんな人間の意見に耳を傾ける必要を感じません
私は評論家よりももっと恐ろしい意見を真っ向からぶつけてくる人々に
直接洋服を手渡しています
そう
ここで私の服をお買い上げいただいている人々です
汗水垂らして働いて稼いだ大金を
私の服のために私に向かって支払う人々です
ここにいるのですから
逃げも隠れもできません
そうすることで怠け者の私は気を抜かず必死に洋服を作るのです
裏地一つ仕様一つボタン一つにおいて
もっとこうしておけばよかったと思うことはすぐに反映します
こんなシンプルなことに
気づいていないのが洋服の世界の人々です

時代遅れとか言われます
でも
私の譲らずに続けていることは
もともと時代に左右されるような事柄ではありません
作家としての素養だと思っています
偏屈で結構
めんどくさくて結構
こんな風に仕上げてくれた我が父に感謝です