小さな森

cassowaryという鳥は
和名では火食鳥と呼ばれ
一撃で人を殺すドロップキックを繰り出し
黒づくめに青い顔と赤い髭という
なんとも存在感のあるイデタチをしています

しかし
この鳥は生態系に大きく貢献する創造者でもあります
主食である果実を丸呑みし
自由きままに大平原を闊歩しながら
自然の赴くままにフンを撒き散らします
そのフンには消化されなかった果実のタネが含まれ
やがてフンを肥料に新しい樹木が芽吹きます
つまり
本人は己の食欲を満たして排泄を繰り返すことが
新たな森を産み
そのおかげで森でしか住めない動植物の新たな生態系を切り開くわけです
無意識無関心のチャリティー
これこそ真の奉仕であると
私も我が欲求を満たす物作りが結果として誰かの欲求を満たせれば
そんな思いを込めてこの鳥の名前を我が城に冠した次第です

志は未だ半ば
十分な型数も生産数も仕込めず
地味なイバラの獣道を進んでおります
ただ
この鳥の名をつけたからなのか
なぜか
cassowaryでは植物がよく育ちます
寺町御池の頃に買ったオーガスタは私が両腕を広げたかのような恰幅
オープン当初からシンボルのように君臨するエバーフレッシュは
エバーフレッシュを所有する皆さまから
どうやってそんなに大きくしたのか聞かれます
そして自宅で枯れかけたトネリコは見事に復活しました
今日はあいにくの雨ですが
晴れた春や秋の昼下がりは
実に心地の良い日差しと風が舞い込みます
人間がこれだけ居心地がよければ
そりゃ植物も育つというわけでしょうか
今年で10年になったここでの活動
やはり正解だったようです

洋服屋としてだけでなく
この店がもっといろいろなことの拠り所になれば
そう思っています
音楽や食事
お酒に家具
まだまだやりたいことだらけです
ここが小さな森のようになれば良いと
思います