シャツとシャンパーニュ

幾度となく書いてきましたが
春が苦手です
単純に季節としても苦手ではありますが
大体の私と同じ職業の人間は春という季節を嫌います

無論
merph的理由は察していただく通りです
年中コートを作っていたい男にとって
手数を増やすことができない春夏のデザインは試練でしかありません
しかし
美しい四季がある日本で洋服を作る以上
このわがままは通りません

苦手といえば
シャンパーニュも僕の歴史に縁のない酒です
汚い話で申し訳ないのですが
ビール党の私にとってシャンパーニュの味は
ビールをしこたま飲んだ後に白ワインを飲んで飛び出したげっぷの味…
その上やたらと酔っ払う…
お祝いでいただくことも多いこの悪魔の酒が嫌いでした
しかし
たった一本のシャンパーニュとの出会いが考え方を変えてくれました

『ルアレ デボルド』
僕が苦手とする下の奥でグッとたまるアルコール感を感じない
実に爽やかなシャンパーニュ
出来を語るのは嫌いです
ただ
単純にうまいと思ったんです

ドンペリやモエシャンドン、ヴーヴクリコくらいしか飲まずに
自分には合わない酒だと決めるのは早すぎました
シャンパーニュと言えどこの世にはたくさんの作り手がいるわけで
それを一括りにしてしまうなど
小さな会社で洋服を作っていて
自分がされてら一番嫌なくせに…
全くもって恥ずかしい考えでした

いい大人です
不惑ともいう区切りもとうに超えました
でも思うんです
今の世の中
40歳で達観できるほど物も情報も少なくないんです
だからジジイになっても迷えばいいんじゃないかと

さあ
そう言ってしまった以上は
シャツももっと色々やるしかありません
そうすれば苦手な春が楽しくなるかも

14年やっても
まだまだ未熟なデザイナーです
毎日絵を描いて酒飲んで
シャツのアイデアに『ルアレ デボルド』を探し続けます