妄想なくして未来なし

幼少の頃より続く妄想癖
突如野球部の試合が平日に組まれ
授業を抜け出し
クラスメイトに見送られ熱田市民球場に向かう
などと
起こりもしないヒーロー設定を
つまらない算数の授業中に繰り返した野球少年は
中日ドラゴンズの選手になる夢を
部室をシンナー吸引室に変えていた先輩に潰されて
中学生の時点で早々と諦めた
その後しばし音楽にうつつを抜かし
やがて洋服のデザイナーになった

そんなわたくしが今
忙しい最中に繰り返す遊び(妄想)は
家庭料理の居酒屋を始めること
仕事に行き詰まった深夜
携帯でhuluを起動しディープインパクトなどを鑑賞しつつ
エクセルで展開し
借り入れから物件契約や内装をシュミレーション
雇うスタッフの年齢性別まで組み込んで
同じスケールの飲食店がどのくらい光熱費がかかるのかをネットで調査
運営経費まで算出して月々の収支を計算する
毎日のようにチェックするテナント賃貸のサイトの中から
立地とコストのマッチングを探る
そして一年運営してみてどうなるかを計算する
大概ぼろ儲けになるのだが
5年で家が建つはずだった洋服稼業もこの有様
どこかに圧倒的な経営センスのなさが隠れているはずだが
妄想の中ぐらい儲けていたいからそれ以上は検証しない

そんなことしてるうちに
妄想の夜はすぐに明ける
余計なこと
そう言われるがそうは思わない
ドラゴンクエストのカセットの箱や説明書に載ってる
挿絵の剣や鎧は銅の剣まで
その後のアイテムがいったいどんな姿なのか
ナナを垂らした弟にしつこくせがまれて
想像しながらノートに描いているうちに
中日ドラゴンズでスイッチヒッターになっているはずだった少年は
まだこの世にない洋服を描けるようになった

妄想はやがて形にすれば立派な起源になる
何事もまず妄想
何年か後
わたくしが中央市場に仕入れに行く日が来るのなら
昨夜の妄想はその始まりだったことになる
今夜はその店のメニューを考えて眠気を待つ