京都の引力

東京から新幹線で岡山へ向かう音楽家に
京都駅で途中下車してもらい
名古屋からギターメーカーさんにも参加してもらって
京都駅ビルの11階で昼食を取りながらの製作会議
初めてお会いしたギターメーカーのY氏は
偶然にも私の高校の先輩でした

京都という街は
わざわざこちらから出向かなくても
皆さんが来てくださるんです
それが狙いでここに腰をすえたわけではないですが
先人たちの作り上げたこの由緒ある街に助けられています

洋服を創る者として
やはり海外に進出というのは夢の一つになります
しかし
ここ京都で毎日たくさんの外国人の方にお買い上げいただいてるうちに
その意味さえなくなって来ました
海外のコレクションに出たところで
それほど洋服は出回るわけじゃありません。
私の力不足も認めますが
過去に勤めたレーベルでその苦労と不毛感は存分に味わいました
海外の卸売なんて博打ですから
中間に入った業者が金持って逃げるなんて
中日ドラゴンズの勝率よりはるかに上です

cassowaryには
宣伝もしてないのに
海外の方が続々いらっしゃいます
大金使ってパリだのフィレンツェだの行くよりも
この街でじっくりと洋服を創り続けていた方が
結果的に私の創るmerphは海を渡って行くんです

先鋒

こちらも女性用を製作しました
薙刀でも構えさせたくなる仕上がりです
男性用とデザインは何ら変わらないのですが
ちょっと着丈の比率を変えています

色だけでなく
起毛のかかったしっとりした肌触りも気に入っています

男性用のMR2070とともに
今年秋の先鋒好調です
外套製作を得意とするmerph
いよいよざわついてまいりましたよ

女流小説家

夏がこれから本番を迎えようとする中
店頭に届いた”novelist”
春の前モデル”bookman”があまりにも女性に人気があったため
今回はしっかりと女性のサイズを製作いたしました

merphの公式instagramでも素早い反応をいただき
猛暑と台風に襲われる中
毎日売れております

先日過去のスワッチを眺めていたのですが
1シーズンに震えるほど多くの型数を製作していました
しかし
今見ると型数を作り込むことに追われて
ちょっと詰めの甘い作品が紛れ込んでいると感じました
あの頃はあれが精一杯だったんで
決して手を抜いたり妥協していたわけではないのですが
細かいところに気がつけなかったんだと思います
あれから環境を自ら変えて
直営店でのみ販売するようになったmerphの作品は
型数こそ半分以下になりましたが
作品としては大きく成長したのではないかと思います

今年の冬もご期待ください
みなさんを満足させる作品を必ずお届けします

理論上シャツ

春にリリースした”bookman”というデザインのロングシャツを
さらに着丈を伸ばし(120cm)
袖口のオーソドックスなシャツのディテールを削除しました
目指したのはバスローブの雰囲気

しかし仕上がりは私のイメージをしのぎ
立派なコートとなりました
気軽に作っても仰々しい
これはもうmerphの個性です

これまでこれをシャツと言い切る私の態度に
文句を言いながらも縫い続けてきた工場も
さすがに今回は生地の厚さと縫いあがりの迫力から
『これはもうシャツ工賃ではぬわんよ』と怒っていました

工場の皆様
おかげさまでMR2069好評です
来シーズンはまた生地を薄くしますので
なんとかまたお願いします

夏とdolman

暑い中冬の装いのトピックスが増えておりますが
現場はまだまだ夏の真っ只中
みなさんに必要なのはこの辺りでございましょう

いくつか完売してしまった品番とカラーはありますが
まだは在庫ございます
今年もドルマンTee-shirtsは好調です

それを凌ぐ成果を出したドルマンの半袖シャツの方は
追加生産分もあっという間に完売いたしました
未だにお問い合わせをいただいたり
店頭でスタッフが着用しているのを見てリクエストいただきます
また来年
しっかり生地をおさえて
さらにカラーバリエーションも増やして生産することを約束いたします

本日京都は32度
40度近い日が続いたせいで
涼しいとさえ感じました
このまま秋になってほしいものですが
そうはいかないんですよね
クーラーとアイスコーヒーで暑さをごまかして
しっかり夏を受け入れて暮らします

エンタープライズ

18時前に車で北大路通りを西に向かった
まっすぐ左大文字へと伸びる通りの上に空が開ける
その西の果てに
大きな円盤を確認
おそらくあれはスーパーセル
発達した積乱雲の上の部分だと思う
その姿はまるで
そう
スタートレックのエンタープライズ号のようだった

夏は苦手だ
でも
夏の空は好きだ
できればこんな季節に大自然に身を投じて
ただただボーとしたいところだが
夏は秋の前に来るわけで
秋といえば我々merphの主戦場であるから
ここでのんびりしているわけにはいかない
平日はmerphのデザインと生産の最高責任者として
週末はcassowaryのトップセールスマンとして休みはない
身勝手な服を創る者として
誰よりも策を練り
誰よりも現場で服を売る
まさにエンタプライズ号のピカード艦長のように
乗組員の誰よりもまず先に立つのだ

灼熱の7月の末の木曜日
今日も朝から決断と躊躇の攻防戦
創るには金がいる
創らなかったら金にならない
『安くごまかして利益を上げろ』
そんなことができる相手はうちには来ない
自分でそういう店にした
だからやっぱり休まず働くしかない
貧乏暇なし
表現者の休暇は死んでからだそうだ