満月の夜の狼中年

とりあえずメンズのサンプルが仕上がって
昨日から東京で展示会が始まった
肩の荷が6割降りてほっとした帰り道
東に向かう道路の先に霞む満月
音楽のボリュームを上げて
二条通りへ一本降りて
平安神宮の方から自宅へ向かった
次の満月は歩いて帰ろう
エレファントカシマシのアレを聴きながら

さあそしてまたしてもの展示会
こないだやったばかりじゃないの
心の中で愚痴を言いながらも
24型35着のサンプルを製作した
デザインを描いてパターンを上げて
トワルを組んでサンプルがやって来て
喜んだりうなだれたり
焦って走って修正加えてなんとか東京へ送り込んだ
ここから1ヶ月の間バイヤーとの交渉に入る
みなさまよろしくどうぞ

まだanimaのサンプルあげなきゃいけないけど
もうデザインも職出しもほぼ終わっているので
今度こその今度こそ
直ちに2017年の春の衣に取り掛かる
関係者は誰も信じないだろう
狼少年は声をあげても信じてはもらえない
だから事実を作っていくしかない

狼中年
満月に誓う

 

 

いつもの峠で午後三時

土曜日だというのに
カットソーの工場さんは朝からサンプルを縫ってくれた
09:19
縫製の最終確認の打ち合わせをして
連絡が来るまで待機
昼飯を済ませ珈琲を飲んでいるところに入電
13:36
急いでエンジンをかけていつもの峠に向かう
15:03
サンプルを受け取る
四着のパーツの多い作品をあっという間に
それもとても美しく縫い上げてくれた
今回のカットソーの中で一番不安だった品番が
今回のカットソーの中で一番の作品になった
パターンナーと工場さんにただただ感謝
また今回も変わりなくドタバタで申し訳ない
次回こそは次回こそは……

 

 

 

死神の情(なさけ)

merph_animaのトレンチコートが評判良し

くどくどとなんども言い続けている洋服の”つら”について
それがこのコートではかなり納得のいく出来栄え
ベースパターンや生地や縫製仕様やディテール
それだけじゃなくボタンの間隔や配置
ポケットの角度と大きさ
着丈に対するカッティングや様々なポイントの設定
絵を描くとこから始まり
数字を決めて生地を決めてボタンを決めて…
出来上がったのがこの納得の新作

今年は秋冬へのエネルギー温存のため
春夏の生産を去年に比べて大幅に減らしているので
在庫が十分じゃない
そんな時に渾身の出来栄えを叩くあたり
商売の神様に愛されていないのだと
つくづく心が腐りそうになるけれども
背中に乗ってる死神だか貧乏神だかも
長く付き合うと意外と情が湧いてくるのか
それとももっと足掻く僕を見ていたいからなのか
一向にトドメを刺さない
そんな甘いところに漬け込んで
隙をついて大儲けをする夢を見る

来週からショールームの展示会に合流
merph 2016 autumn and winter
相変わらずのコートだらけのコレクション
懲りずにさらりと公開開始

春待ち

春らしくはなった
でもまだ”春”とは言えない3月17日
桜も準備段階で停滞中
去年は3月28日に我が家の前の桜はアウトブレイクした
今年も開花は3月28日の予報
その頃僕はきっと酒にまみれている

京都の東山に引っ越して1年半
出勤途中は桜で溢れている
岡崎から冷泉通を抜けて川端通りへ
残念なのは丸太町河原町の角にあった
小学校の大きな桜が切られてしまったことだ
そこから地方裁判所の横にはしだれ桜?ってのかな
ちょっと赤みの強いつがずらりと並んでいる
春は好きではないけど
桜はさすがにぐっとくる

今年も相変わらず花見の時期に大忙しの稼業ゆえ
花見の予定はない
自宅の二階の窓を開けると目の前は大きな桜の木
それを聞いてこの家に決めたのに
よく考えてみればその桜が満開の時に
僕は東京ホテル住まい
花見の計画で盛り上がる友人たちが羨ましい

安心

トレンチコート
このコートでいかにmerphと成すか
悩んだ
結果大きく割れたウイングベントを採用して
胸のあたりだけにしかボタンを配さず
ポケットは軍用のフラップポケットにした

IMG_0795

merph_animaのトレンチはこれ
入荷日にすぐに売れるのは何よりも分かりやすい評価
ハンガーにかかっていても
着用している姿も
見ていて穏やかな気分になる
サンプルの製作時に起きる苦難を乗り越えた作品は
デザイナーを安心させてくれる

さあ
今日もサンプルが届く
どうか騒つかないように

三月中頃、日常

毎日
このライトの下で
問題を解決していくだけで日が暮れる
展示会サンプルは
いつもそうだけども
一筋縄じゃいかない

今日も朝からあっち行ってこっち行ってからcassowary
そのついでに昼メシは王将で酢豚定食
酢豚にジャガイモが入っていた
これは王将のスタンダードなのか
それとも北白川店のひらめきなのか
どちらでもいいが
個人的感想を言うと
パイナップルには勝っているが
できれば入れないでいただきたい

王将を食べた午後は眠気との戦い
カウンターで珈琲を飲み
時々白目をむきながら
どれだけ見直してもミスが見つかる書類とにらみ合う

午前中に届いていたサンプルは又してもICUへ緊急搬送
戦線に復帰できるか
それとも一度も試合に出ず引退するか
洋服の世界は厳しい
そんな中午前中指定の荷物が午後に届く
佐◯急便の午前中指定は努力目標
本部の偉い人がそう言った
しかしその遅れてやってきた新人が
暗く重たい空気を切り裂いた
品川の新幹線ロビーで打ち合わせしたスニーカー
まるでブーツみたいなスニーカー
これはいける

16時を過ぎた頃から
眠気には打ち勝つ
なぜなら寒気が襲ってくるからだ
3月とはいえ
コンクリートに囲まれたここは
日が傾くと冬の気温になる
仕方なく17時20分暖房起動
すると眠気が蘇る

忙しいふりしているが
結局のところmerphのデザイナーは
毎日
眠気と戦っているだけ

 

一文無しは早く起きろ

まだ肌寒い
というより
寒い

今日は四時に起きた
和食の朝食を取り
一本映画を見てから出勤
それでもまだ午前十時
この清々しさと
同時に襲う普段への猛烈な後ろめたさ
やはり
人間朝早くから仕事して
腹すかして昼にうまいもん食う
それがいい
当たり前のことがずっとできてなかった
一文無しでも早起きすれば三文持ちになれるはずだ
三文は現代の貨幣価値に直すと100円くらいらしいから
一年続けりゃ36,500円徳をするんだ
そういうとこから意識改革
不良経営者の根性を叩き直す


気合を入れたところにサンプル登場!

IMG_7340

しかし2型出来悪し!
直ちにセカンド製作始動!
このくらいで挫けない!
3型は問題無し!
明日のサンプルはきっと美しいはずだ!

オーロラマダン

iTunesの”FOR YOU”に出てきた懐かしのバンド
“echobelly”
ケルトやノルディック民謡のようなメロディーに
少しパンクなギターロック
そして
何よりもインパクトがあったのは
ボーカル”ソニア・オーロラマダン”
インド系のイギリス人の美少女
元キックボクサーの異色の歌姫
彼女の独特の低めの声と歌い方
たまらなく好きだった

とにかく毎日くらい聴き続けたアルバム
“Everyone’s got one”
今日はcassowaryにてこれを大きめの音で聴いている
大学の2回生のとき
このバンドのinsomniacって曲をやりたくて
わざわざどっか他の大学の女の子入れたの思い出した
名前なんていったけな
ぞっとするが20年前の出来事だ

それにしても
さっきからずっとこのアルバムを聴いているが
全曲好きだ
そんなバンドこのバンドとゴダイゴくらいしかなかった
今日家に帰ったら間違いなく
何曲か譜面探して弾いてみることになる

アップルさん
ありがとう

デッドエンドスターター

やまない雨の水曜日
しずかな水曜日
我らはせっせと冬仕込み

もう3月
またもや展示会
早すぎる流れと
変わらない日々
脳みそが腐るんじゃないか
筋肉が溶けるんじゃないか
無駄な心配を繰り返し
無意味な決意は垂れ流し
それでも縫いあがったmerphに興奮し
甘ったれた心に往復ビンタ
土壇場に来て最大出力全速前進
分刻みの決断と冴え渡る代替案
この10日間の集中力を
なぜ僕は3ヶ月前にできないのか
嘆いていても始まらない
関係各所に頭を垂れて
今はとにかく休まず進め

そんな日々が続いた
ようやくすべての品番の何某がはめ込まれて
あとは上がりを待つのばかり
今度のmerphはどうなるか
どうか強く美しく
一目でmerphとわかるよに
工場の皆様
よろしくどうぞ

 

塹壕外套

長引いた冬が終わった
合わせるように春の作品が届き始めた

その中から本日はトレンチコートをピックアップ
これまでのmerphでリリースしてきたものと
完全に異なるフォルムの新作

シルエットは緩くAラインに開き
肩幅いつもどおりだが
身幅も少しとってある
そして何より後ろのウィングベント
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このディテールがしばらくmerphのアイコンになるので
お見知り置きを

一見変わったディテールではある
しかし単純に変わったことをやろうというわけではなく
このアイデアにより
洋服は動きを手に入れて
さらにベントの機能も備わって
着用者も動きが取りやすくなる
しっかりと物理的なメリットがある

生地に選んだのは60/2スーピマで織り上げたバーバリークロス
ある程度のしなやかさと張りを共存させている
”ちょうどいい”バーバリー
控えめで艶やかな光沢もよし
いつもとちょっとちがうmerphのトレンチ
よろしくどうぞ