二律背反

スウェットパンツという振り切った快適さと
ナイロンの頑丈な細身のパンツというストイックさ
その相反する二つのスペックを混在させる
merphのパンツがずっと続けている表現です

オーソドックスな30/10裏毛に
これまたオーソドックスなナイロンツイルのパッチパーツを叩いて
同じ黒を素材の違いでコンビにしました
高密度のナイロンツイルは風を遮り
体温を外に逃がしません
その下には全面スウェットがあるわけですから
これから冬に向けてしっかり戦力となるはずです
すでにサイズ3が風前の灯火ですが
1と2は潤沢に在庫がございます
お試しあれ

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自信と自覚

洋服屋は皆それぞれこう言う
『うちは他の店とは違う』
しかし洋服屋で洋服を買うお客さんは皆それぞれこう言う
『洋服屋はどこに行っても一緒』
自信を持つことは大事だと思う
でも自覚を持つことはそれ以上に大事だと思う

僕が考える自分らしさは
今自分の洋服を置く3つの部屋でできているか?
答えは『まだまだ』だ

これからmerphは自分の洋服を扱う場所を自分たちで創っていく
思えば今まで
人様の作った店で自分の洋服を扱ってもらうくせに
ずいぶん横柄な態度だったと”自覚”した
だからもう卸での取引をやめることにした
言ってみれば翼をもがれたような状態のはずなのに
前よりずっと自由に飛べるようになった
翼をなくした瞬間
武空術でも習得したみたいだ
これは洋服を作らない連中に支配された洋服の世界で
やみくもに自分自信の洋服を創っている奴らみんながやったほうがいい
あたらしい方法じゃなく元の姿だ
たった30年前
僕らの先輩はみんなそうやっていた
怖がる必要は無い

merphの店はまたどこかの街へ進撃する
今狙いを定めている街は二つ半
京都と神戸と広島でmerphは健全に成長し
またそこらの洋服屋とちょっと違う”様子”の部屋を
もしかしたら次はあなたの帰り道に創るかも
しれない

中秋のmerph

広島から戻り
余韻に浸る間もなく猛烈に仕事をしています
全身全霊を注ぎ込んでオープンさせた広島the 3rd heimは
想像をはるかに上回る結果を出しています
それにあてられて
京都と神戸もやる気です

明日はアンゴラシャギーのロングジャケットが仕上がってきます
岐阜の工場で仕上げたシンプルですが美しいジャケットです
各街にこの作品を待っている人がいます
生産数も少ないのに特級の工場を使い
名もないくせに極上の生地を選んでいます
決して安くないmerphの作品を
これだけの人が手にしてくれるのは涙ものです

さあ
夏は完全に終わりました
今宵は中秋の名月
生憎の曇り空ですが
秋のmerph
水を得た魚のように参ります

 

紅茶のheim

広島の快進撃はプロ野球だけではありませんでした
我らがmerphの第三旗艦店
the 3rd heimの進撃も止まりません
連日の売上高に京都と神戸の在庫が日々吸われていきます
負けるわけにはいきません
気合を入れて先輩の意地を見せます

さて
その第三旗艦店の特徴をもう一つ紹介します
オーナーの下山は数年前から紅茶にはまり
紅茶店のオーナーに教えを仰ぎ
美味しい紅茶を淹れられるように修行しております
今回真っ白な壁と紺碧の絨毯のthe 3rd heimをイメージし
カクテルのブルーハワイを模した香りのブレンド紅茶を用意しております
顧客様にはそちらも
この写真のカウンターやソファー席でお楽しみいただきたいと思っています
京都はオーナーである私の嗜好の影響で
無数の酒が並んでいますが
広島は甘い紅茶の香りのする店となっていくでしょう

広島は観光で訪れても非常に楽しい街です
瀬戸内海の海の幸
しのぎを削る無数のお好み焼き屋
もうすぐ名物の牡蠣もメニューに並ぶそうです
そんな強敵の中でthe 3rd heimも
広島に行ったら寄りたい場所になりたいと思っています

奇跡が簡単に起きる街

広島から戻りました
あらゆる奇跡と呼びたくなるような出来事が多発
自分の引きの強さに少々引いてしまうほどの4泊5日でした

まず8日(初日)
広島カープを愛する京都人が前乗りで広島入り
その京都人
チケットもなくマツダスタジアムにやってきて
外からフェンスにへばりついて応援しようとしていたところ
スタジアムの中から歩み寄ったおっさんに
『やるわ』とチケットをタダで譲り受けるという奇跡(奇跡①)
これがすべての始まりでした

しかし
この友人の引きがイマイチ弱かったのか
空気の読める我らが中日ドラゴンズは
見事に広島三連戦を三連敗したものの
空気の読めない阪神は巨人にまたして負けてこの日の優勝はお預け
友人はマツダスタジアムを後にして
東京の仕事仲間に紹介された店で先に飲み始め僕を待っていました
仕事を終えて到着した店は前回広島スタッフに紹介されたけど
休みで伺えなかった居酒屋(奇跡②)
店の大将に25年前の優勝の時の大混乱話を聞き
大いに盛り上がってから
二軒目に訪れたのは
花とギター
広島を代表するパンクバンドのら犬の足袋井さんの店
僕はこの人の歌うアイナハイナという歌が大好きで
すでに耳コピしてソラで歌えるほどの状況
アイナハイナという店を出した後輩のために作った歌
しかし彼は仕入れの途中に事故で亡くなって
アイナハイナは名前を変えて別の人が引き継ぎもう無いと聞いていました
足袋井さんに十日市に店を出すと話して場所を伝えたら
なんと我らの3軒隣がかつてのアイナハイナだったと判明(奇跡③)
その後次から次へと訪れるお客さんと盛り上がり
千鳥足でホテルに戻り
数時間仮眠をとってレセプションを迎えました

そして当日
午前中から我が社の写真を色々撮ってくれている森川くんが10時に到着
まず店舗撮影を開始
その後15時前にスペシャルゲストオオヤユウスケ到着
盟友がライブのリハをしていると
料理を担当してくれた広島の葛(カズラ)の田中さんが
料理を搬入に来てくれて
オオヤユウスケをみて何やらそわそわしています
僕にあの人何て人だと尋ね
すぐさま携帯で検索
そしてオオヤユウスケが
元LAB LIFEというバンドをやっていたことを知って大興奮
若い頃
周りにLAB LIFEのPVをダビングして配って聞かせていたほどの大ファン
憧れの本人に会えて大盛り上がり(奇跡④)
アメリカの大手航空会社の機内食もプロデュースする有名料理人が
少年のようにはしゃいでいました
そんな熱気の中で始まった9.9のお祭り
京都からやってきたソリレスとせくめとのバーカウンター
”ソリめと”も大盛況
田中さんの料理も大好評
オオヤユウスケのライブはいつにも増して美しく
最後には調子に乗って私までハナレグミ
大成功のオープニング祭り
実質3時間しかなかった販売のタイミングで売れた金額をきいて腰をぬかし
祭りの後も明け方まで広島のスタッフとオオヤユウスケと僕は酒を酌み交わし
気がつけばまたして午前5時
フラフラのまま9月10日いよいよ本オープン

昨日の嵐が嘘のように静かな店内
それもそのはず広島にある100万人の200万個の目玉は
東京ドームで行われているそれに釘付けです
店がある程度の売り上げを上げたところで
僕も金沢からきている友人と街へ向いました
二軒目に訪れた居酒屋
初日に伺った奇跡②の居酒屋で歓喜の時を迎えることになります
隣で送別会をしていた
旅客機を作っている会社のおっちゃん達が店中にビールを配る
そしてその会社の女性社員(元名古屋のバーテンダー)の大号令の元
優勝を祝う乾杯!!
そう
the 3rd heimのグランドオープンの日は
広島東洋カープ25年ぶりの優勝の日となりました(奇跡⑤)
ちなみに隣のおっちゃん達の主役
つまり今月で他社された方(射場『いば』さん)は
その会社に入ったのが25年前広島が優勝した年で
退社がまたしても広島が優勝した年に成る奇跡
次に優勝する時は死ぬ時だ!!
と言った後
『めざせ連覇!』と言うてました
長生きしてください

店を出るとそこはレスター優勝に負けずとも劣ら無い赤い歓喜の人だかり
道行く老若男女
強面ヤクザも生真面目ポリスもハイタッチ
なんなんだこれは
日本一のファンを持つのはこの街の球団だと思った
またしても朝まで飲むことになった中日ファンのデザイナー
泥のような顔色で最終日日曜日の店に出勤
優勝セールで沸く街中の喧騒をよそに
落ち着いた白い部屋
でも
熱心に洋服を選びに来るお客さんは絶え間なく
アレヨアレヨという間にベストやコートやニットが消えていく
そして22時店が静かに閉店
そこには疲れ果てた広島のスタッフと
打ち上げ用にとった出前の中華
お祝いでいただいた数百本の黒ラベルがありました
薄々感じてはいましたが集計を出してみると
その金額は
オープン前に立てた9月ひと月分の目標金額
たった三日で第三のmerphの店はひと月分の売り上げを上げてしまいました
これ最大の奇跡なり(奇跡⑥)
洋服の世界に身を置いて
こんなに興奮した数日間を過ごしたのは初めて
名残惜しさ全開で先ほど京都に戻ってきました
そんな広島駅に向かうタクシーの中で最後の奇跡
土曜日に昼飯を食おうと店の向かい側に渡って散策している時に
綺麗な蕎麦屋を発見
残念ながらまだ内装工事中だったのですが
そのタクシーの運転手さんと
僕が今回広島の優勝の日に十日市に店を出したことや
京都から来たことを話したら
『そういえば昨日乗せた兄ちゃんも京都から来て
9月16日におたくの店の向かい側に蕎麦屋を出す言うてましたよ』
なんと同じ月に京都から十日市の同じ交差点に店を出す男達(奇跡⑦)
まだ見ぬこの店主とは来月から飲み仲間になれのではないかと思います


長々と最後まで読んでいただいた皆様
ありがとうございます
広島
奇跡がそこらじゅうに転がる街

冒頭の写真は広島店オーナー下山匡樹(シモヤママサキ)
この男
写って無い頭の半分下にちょっと秘密がございます
広島にいらっしゃる際にご確認ください

最後にお詫び
the 3rd heimもこちらのブログに参加する予定ですが
未だご挨拶できておりません
理由は先も申し上げたとおり
あまりにも売れておりまして全く追いつか無いのです
後日改めてご挨拶いたします
これからは
京都cassowary 神戸ammon 広島the 3rd heim
merphの三連星として
よろしくお願いします

heim

開店直前
午後12時45分
the 3rd heim
一番奥のスペース
L字のカウンター
IDEEのソファとジャスパーモリソンのコーヒーテーブル
広島のボス下山の入れる紅茶をここでいただく
広島のどこにもない洋服店
事務所を広島に移したくなるほど
cassowaryだってそこそこ居心地のいい空間だと思うが
さすがにここにはかなわない
嫉妬すら感じる
事務所を広島に作りたいとまで思う
いい部屋すぎる

歓喜と驚異

洋服店で働きだして22年
もう何軒も自分の洋服を飾る店のオープンというものを経験してきました
しかし
今回ほど感動的で興奮するオープンはなかった
広島のお客さんはもちろん
京都や金沢からも僕の友人が駆けつけてくれて
美しい音楽を奏で
美味しい料理とお酒を用意してくれました
宴はもちろん素晴らしかったのは言うまでもないところですが
驚いたのは売り上げです
当初予定していたオープンから週末3日間の売り上げを
なんとプレオープン4時間で達成してしまいました
スットクルームの900mm幅のハンガーラック8本に
びっしりかかっていた在庫は
半分以上なくなりました
信じられません
ライブ時間は販売はできなかったから
正味は3時間弱
恐るべし広島
同じく洋服を売る者として久々に驚異を感じました

出来上がった店の姿
早く皆様にお見せしたい
この空間はずるい
あまりにも広く
あまりにも落ち着く
あいまいにあまいあいのまにまに

広島に来たら絶対にお立ち寄りいただきたい
the 3rd heim
新しい看板のない店
すでに風に乗りました

9.9

待ちに待ったこの日がやってきました
この半年来る日も来る日も今日の事ばかりを考えて
限られた時間と資金の中で
最大限魅力的な部屋を作り上げるため
僕と広島のスタッフは毎日のように連絡を取り合って
様々なものを集めるために
昼間は京都と広島中を走り回り
夜中はネットワークの中を彷徨い続けました
その努力と熱意
本日陽の目を見ます
ここがmerphにとって
そして広島にとって
長く愛される場所となるように
今日はお越しいただいた皆様と存分に楽しもうと思います

さあはじまります
the 3rd heim
merphの第三の部屋
広島の新しい部屋
よろしくお願いします

いざ広島へ

いよいよ前日
事の始まりは半年前
あれから猛スピードで物件を決め
内装を打ち合わせ
厳島神社に成功を祈願し
その夜にスタンド(スナック)で飲みながら
オークションでソファを競り落とし
広島スタッフと分担してあらゆるものを買い集め
極め付けは店内の壁を全てみんなで白く塗りあげた
目玉にペンキが飛び込んで悲鳴をあげて
脱水症状で下半身を持って行かれ
天井を塗った首はガッチガチにかたまった
でも
自分たちで一手間加えた新しい部屋は
素晴らしい仕上がりになった

さあ
明日9月9日
merph第三の旗艦店
“the 3rd heim”
カープが優勝する年に広島にオープンする

the 3rd heim

merphをご愛用いただいている皆様へ

本日は皆様に重要なお知らせがございます
2016年9月9日金曜日
我々merphは
広島市中区十日市町に
三番目の旗艦店
the 3rd heim(ザ サード ヘイム)をオープン致します

広島の繁華街
袋町周辺を避け
太田川を渡った十日市町に構えます
160平米を超える広大なスペースに
ゆったりと美しくmerphを展示します

店名は3にこだわりました
広島は3という数字にゆかりが深い町です
その街にmerph3番目の店を出します
そこで素直に3rdという言葉を入れました
そしてheimは北欧神話で国を意味する言葉です
表記はルーン文字を使っています
シンボルマークはユークリッド幾何学が記されたパピルスに
唯一書かれていた図形をモチーフにしました

店内はmerphの哲学をしっかり反映させます
作り付けの什器は皆無
そこに長いカウンターと奥にティールームを設けます
ハンガーラックは広島出身のデザイナーの物を使います
シンプルでインパクトのある
看板のない店がもうすぐまた一つ増えます

歴史的な美しい街
広島
この出店のために何度も訪れましたが
素晴らしい街です
地元に愛される球団があり
地元を愛する人たちが魅力的な街を作っています
その街に恥じない魅力的な店にしたいと思います