新しいカタチ

今年のトレンチコート
MR1105 comander 
自信作にしてヒット作
決して安くはない
これまで製作したトレンチコートで一等高い
それなのにmerph三店舗で入荷から毎日売れている
これだから洋服創りはやめられない
こういう服を創っていかなきゃいけない

春への仕込みをそろそろ始める
『まあ、いいか』でも服は仕上がる
でもその服は『まあ、こんなもんか』にしかならない
しっかり考え抜いて
丁寧に絵を描いて
新しいmerph
新しいカタチ
どんどん創っていきたい

メルフの季節

店に差し込む光の脚が長くなってきました
お待たせしました
メルフの季節です

10月は中綿入りのバルマカーン”highlander”と
大きなラクーンファーを首元に備えた”fixerhunter”が仕上がってきます
コート屋とまで言われることもあるcassowaryです
シャツもニットカットソーも
一見コートに見えるものばかり
急激に秋が加速した今週は
京都 広島 神戸 それぞれのmerphの部屋で
続々とコートがオーナーの元へと手渡されました
これからの三ヶ月間で
merphのコートを売りつくします

ウイングベント

燕尾服ってのは
実に美しいフォルムを醸し出す
しかし
凝り固まったイメージが普段着用する気にさせないと感じる
なんとかあの雰囲気をmerphなりに『噛み砕く』ことはできないか
そう思いながらふんわりと2年ほど過ごしてきた結果
こうなった

しかし
このディテール
その距離が長いと上手くいかない
よって
今のところanimaでしか差し込めない
今回の製作で大体特性を把握した
今後merphにも反映したい

877km

10月2日
朝九時に音楽マネージメント会社の社長をピックアップし
京都東インターへ向かう
二泊三日の山陽地方大遠征は始まった

まず目指すは『神と海の祭り』の開催される美保神社
島根と鳥取の県境
境港に近い『鳴り物の神様』が祀られる場所
六年前から始まった音楽を奉納するイベント
地元出身のドラマーあらきゆうこが主催として立ち
彼女がサポートドラマーとして参加している
Polarisとフジファブリックを従えて?の凱旋ライブ
私はPolarisの衣装を製作し現地入り
十五時入りを目指し西へと車を走らせた
このライブについてはまた衣装の写真が公開可能になってから
ここで詳しく

翌朝
3時まで飲み続けたわりに爽快に目覚めた私は
今回のホテル売りの朝食をいただきに食堂へ
海産物取り放題のバイキング朝食
無計画に取り続けた食材は
結果
海鮮とろろ丼(玉入り)という欲張り全部盛り丼となった
脇を出し巻きとポテトサラダ
イワシのつみれの味噌汁で固め
ここ5年で最も豪華な朝食を構築した
三十分後には次の目的地広島へと向かわなければならないというのに
炭水化物というオーガニックな睡眠薬を大量投与してしまったので
急いで濃いコーヒーで相殺を行った
それでも眠気に不安を抱えていたので
鬼太郎の電車に乗って米子経由で岡山から新幹線に乗る予定だった
音楽マネージメント会社社長を拉致し広島へ向かった
途中何度も襲う眠気を下世話話で吹き飛ばし
三時間の山道を走り抜けた

およそ一ヶ月ぶりの我が大三の要塞は
まだ出来上がったばかりの匂いが残っていた
我がmerphの店ながら
やはりこの店は素晴らしい空間
京都のcassowaryもなかなかだと思うが
さすがにこの広さは嫉妬する
奥のソファー席とカウンターで紅茶とチョコレート
これはなかなかいい
テラスに差し込む柔らかい光と
製作中のドライフラワー
この日は快晴だったが
オーナー下山曰く
雨の日がまたいいらしい

八時くらいまで毎月3日恒例になりそうな
広島店での販売スタッフアルバイトをして
merphのパターンをお願いしている
weiのデザイナー中神さんに教えて貰った地の魚が食える居酒屋へ
オープン前のペンキ塗りにいつも差し入れをしに来てくれた
すでに飲み仲間となった二人を従えて流川へ向かった
その店はカウンター6席と小上がりしかない小さな店だが
衝撃的にうまいかった
そして
安かった
中神さんありがとう
パターンだけでなはなくグルメナビゲイターとしても一級品なり
今後ともよろしくどうぞ

まだまだ夜の流川を流れていきたかったが
最後の359キロは一人旅
しっかり睡眠をとらないと流れ星になってしまう
というわけで
おとなしくホテルへ戻り
荷物を整えてベッドへ飛び込んだ
うまいものと程よい量の酒で
昨夜は久しぶりにぐっすり眠れた

気になっていた台風も1日待ってくれて
今日も雨に降られず先ほど京都に帰還した
今月から私もcassowaryのショップスタッフとしての任務がある
疲れたなんて言っている暇はない
仕上がりたてのトレンチを今日もここで自慢する

 

特別の向こう側

また特別な生地を手に入れました
毎年何かしらオリジナルで仕込んだり
デッドストックから探して特級品を使用していますが
久々に度肝を抜くランクの生地の登場です

普段使う特級もかなりのスーパースターでしたが
今年のこの生地は少し桁違いです
細く軽く手触りの良いウールで織り上げた幅の広いヘリンボーン
滑りさえ感じる感触と
厚さに比例しない軽さ
スポンジのように弾力もあり
ほんの少しある伸縮性がさらに着用ストレスを消し去ります
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デザインはlaluの頃に製作した作品をリデザイン
10年間の色々な経験をしっかり反映させて仕上げました
分厚い生地の文をしっかり計算した微調整もしました
襟の返りや袖振り両玉縁のステッチの美しさ
細部に至る仕様も満足しています
使用した生地
お願いした工場
諸々の理由で決して安くはありませんが
仕上がりに対して値打ちのある金額で仕上げたと思います
2016年のmerphのトレンチコートcommander
店頭配置完了しました

生地発注の勇気

何度かここでも書いていると思う
洋服は3つの要素がしっかりとハマると
化ける
その3つとは
デザイン
生地

どんなに会心のデザインも
選んだ生地によっては縫製に問題が出たり
着用感にストレスがあったりして洋服として落ちこぼれになる
デザインと生地がピンときても
色を間違えると安っぽく見えたり
使い勝手が悪くなったりする
つまり
洋服として存分に力を発揮できないモノになってしまう
でも
その3つの要素が完璧に絡み合った時
製作者自身の満足は当然満たされ
そしてそれは次々と着用者が決まっていく
今年のmerphの秋冬はいつも以上に手応えがある
制作数を絞ってじっくり吟味した甲斐があった
その中でも
冒頭の写真MR4099は会心の一撃
生地が少々高かったので大量に仕込めなかったのが悔いが残る
在庫は倍欲しかった
生地発注の勇気
誰か分けてください

二律背反

スウェットパンツという振り切った快適さと
ナイロンの頑丈な細身のパンツというストイックさ
その相反する二つのスペックを混在させる
merphのパンツがずっと続けている表現です

オーソドックスな30/10裏毛に
これまたオーソドックスなナイロンツイルのパッチパーツを叩いて
同じ黒を素材の違いでコンビにしました
高密度のナイロンツイルは風を遮り
体温を外に逃がしません
その下には全面スウェットがあるわけですから
これから冬に向けてしっかり戦力となるはずです
すでにサイズ3が風前の灯火ですが
1と2は潤沢に在庫がございます
お試しあれ

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自信と自覚

洋服屋は皆それぞれこう言う
『うちは他の店とは違う』
しかし洋服屋で洋服を買うお客さんは皆それぞれこう言う
『洋服屋はどこに行っても一緒』
自信を持つことは大事だと思う
でも自覚を持つことはそれ以上に大事だと思う

僕が考える自分らしさは
今自分の洋服を置く3つの部屋でできているか?
答えは『まだまだ』だ

これからmerphは自分の洋服を扱う場所を自分たちで創っていく
思えば今まで
人様の作った店で自分の洋服を扱ってもらうくせに
ずいぶん横柄な態度だったと”自覚”した
だからもう卸での取引をやめることにした
言ってみれば翼をもがれたような状態のはずなのに
前よりずっと自由に飛べるようになった
翼をなくした瞬間
武空術でも習得したみたいだ
これは洋服を作らない連中に支配された洋服の世界で
やみくもに自分自信の洋服を創っている奴らみんながやったほうがいい
あたらしい方法じゃなく元の姿だ
たった30年前
僕らの先輩はみんなそうやっていた
怖がる必要は無い

merphの店はまたどこかの街へ進撃する
今狙いを定めている街は二つ半
京都と神戸と広島でmerphは健全に成長し
またそこらの洋服屋とちょっと違う”様子”の部屋を
もしかしたら次はあなたの帰り道に創るかも
しれない

中秋のmerph

広島から戻り
余韻に浸る間もなく猛烈に仕事をしています
全身全霊を注ぎ込んでオープンさせた広島the 3rd heimは
想像をはるかに上回る結果を出しています
それにあてられて
京都と神戸もやる気です

明日はアンゴラシャギーのロングジャケットが仕上がってきます
岐阜の工場で仕上げたシンプルですが美しいジャケットです
各街にこの作品を待っている人がいます
生産数も少ないのに特級の工場を使い
名もないくせに極上の生地を選んでいます
決して安くないmerphの作品を
これだけの人が手にしてくれるのは涙ものです

さあ
夏は完全に終わりました
今宵は中秋の名月
生憎の曇り空ですが
秋のmerph
水を得た魚のように参ります

 

紅茶のheim

広島の快進撃はプロ野球だけではありませんでした
我らがmerphの第三旗艦店
the 3rd heimの進撃も止まりません
連日の売上高に京都と神戸の在庫が日々吸われていきます
負けるわけにはいきません
気合を入れて先輩の意地を見せます

さて
その第三旗艦店の特徴をもう一つ紹介します
オーナーの下山は数年前から紅茶にはまり
紅茶店のオーナーに教えを仰ぎ
美味しい紅茶を淹れられるように修行しております
今回真っ白な壁と紺碧の絨毯のthe 3rd heimをイメージし
カクテルのブルーハワイを模した香りのブレンド紅茶を用意しております
顧客様にはそちらも
この写真のカウンターやソファー席でお楽しみいただきたいと思っています
京都はオーナーである私の嗜好の影響で
無数の酒が並んでいますが
広島は甘い紅茶の香りのする店となっていくでしょう

広島は観光で訪れても非常に楽しい街です
瀬戸内海の海の幸
しのぎを削る無数のお好み焼き屋
もうすぐ名物の牡蠣もメニューに並ぶそうです
そんな強敵の中でthe 3rd heimも
広島に行ったら寄りたい場所になりたいと思っています