赤い双星

福松でゆっくり赤星を飲みたい気分だ

ひっきりなしに押し寄せるあれやこれや

展示会前の鳴門の中に深く深く吸い込まれている
サンプルの上がりもギリギリいっぱい

今回着工が早かったのにいつも以上に危うかった

その分よい物が上がってくれると良いのだが


追われているのは展示会の仕事だけじゃない

毎日の様に新作が袖を半分にしてやって来る

検品して伝票作って出荷して

cassowaryの分仕分けして

気が付くと夕方

デザインして生産して展示会して納品して販売して

頭の中まで糸くずだらけ
ビール飲みながら弱い中日を応援するのが最近の息抜きだ

今宵も老人が暴走してベンチ入りした投手全員使って

左ピッチャーに左バッター代打に送り

絶好調の谷繁にチャンスで送りバントさせるんだ

なんだか今年は辛い一年になりそうだ

せめて展示会が大盛況に終わる事を祈る

取引先様

新しくお声掛けした皆様

どうか宮益坂の上までのぼって来てくださいませ

merphの新作をずらりと並べ

厨房から皆様のお越しをお待ちしております

(今回の展示会場はレンタルレストランです)


桜と事故

いつも息子の滑り台の練習をする公園の桜も

ようやく満開を迎えた

東京は既に散り絶えたようだし

今年の展示会中は目黒川に行く事はないだろうか

いや

一軒どうしても行かなきゃいけない焼き鳥屋がある

だからやっぱり行く


事務所にはいよいよサンプルの山脈が隆々とそびえ立ち

今日は朝から商品撮影をしている

なかなか思う様に撮れやしない

やっぱりプロってのは凄いんだな

同級生のやたらとうるさい中学生みたいなあいつの事を

少しだけ尊敬した


かなり集中していたんだろうと思う

そのせいで気が付かなかった

この事務所の一つ南の交差点で

バイクと乗用車の衝突事故があった様だ

車検をお願いする整備士のお姉さんが16時に来てくれて

『凄い事故だったんですね』

と教えてくれて初めて知った

15時30分頃だったみたいだけど

それからずっと交通規制がひかれ

交差点の真ん中には大量の出血を砂で掃除されていた

救急隊員が10人くらい来ていたそうで

バイクの男性はかなり危険な状態の様子
相手は子供を2人乗せた近所のご夫人

見覚えのあるシャンパンゴールドのSUV

子供達はショックを受けた様子も無く

車の外ではしゃいでいたのが見ていいて辛かった


うちの事務所の前の通り

のどかな雰囲気とは反して

結構皆さん飛ばして走る

路上駐車も多くイライラしている人が多い

それから運転があまりお上手じゃない主婦も多い

僕も気をつけないと

まだそれほど運転歴が長く無いからな


昔から

桜の季節に身近で事故が良く起きる

華やかな物はなんでこうも代償が付き物なんだろうね

気味が悪い


ベージュのバルマカーン


コーマギャバジンのバルマカーン

マルチボーダーツイルのシャツと白いチノクロスのスラックス

今年の春はこういうコーディネートが出来る

長らく春になってもカーキとグレートとブラックの服ばかり創っていたから

皆さんから今年は明るいと言われる

特に理由もないのだが

今年はこういう服を創りたかった


バルマカーン

聞きなじみのある言い方で言えばステンカラー

このデザインフォーマットは東京にいる頃に好きになった

どうしておっさん臭いイメージがあったので

若い頃はちっとも好きにはなれなかった

そこに衝撃を与えられたのが

前に勤めていたレーベルのステンカラーコート

何事もない

実にシンプルなそのコートにぞっこんになった

ステンカラーコートに期待した事のなかったスタイリッシュなフォルム

ライナーに使われたハリスツイード

そのコートを黒い細めのスラックスと

UKアディダスの黄色と黒と赤のスニーカーでいつも出歩いた


そんなステンカラーコートを僕もいつか創ろう

そう思ってようやく出来上がったのが去年の事

たった3つのパターンパーツで出来ている手品の様な作品

言葉で書いてしまうとあっけないけど

3つのパーツでこのコートが出来ているのはもの凄い事

それなのに

着用してしまえばただのステンカラーコート

この粋な結末

もの凄く気に入っている


春の桜の木の下で

ベージュのこのコートはきっと絵になると思う

牡蠣納め

日曜日いつもの店に行くと

久美浜出身の友人が大量の牡蠣を手に入れて

牡蠣パーティーが開催されていた

ありがたく仲間に入れてもらって

火を通しても縮まらないとんでもない弾力の牡蠣たらふく頂いた
最高に旨かった

最後は厨房に入り

牡蠣とネギのオイルパスタを製作

ニンニクとオリーブオイル

少しだけ隠し味に南国の醤油を入れて

大量製作だったがまずまずの出来だった


ふらりと立ち寄ったいつもの店で

すっかりご馳走になった上

ストレス解消も出来た

有り難う剛

洗濯日和

絶好の洗濯日和

朝からAWのサンプルを事務所で手洗い

まだ水は冷たい

それを慎重に絞って干して

手がぷるぷる震えている

まだ7割

まだこれから続々とサンプルがやって来る

新潟からは黒猫がコートが運び

京都の山の向こうからは飛脚がワンピースが運ぶ

桜も咲いて春がようやく加速した北山

真冬の準備を進める昼下がり
不安と期待がワンプレートのセットになって乗っている
さて13時

KAMMER

開始




満開未満

あっという間に咲いた

2日前までつぼみだったのに

北山にもようやく前線がやって来た様だ


かといって花見などする時間も無く

昼間に少し観に行ってみたものの

目のかゆみと喉のイガイガに素早く退散

本日の花見1分2秒で終了

春の楽しみをまったく堪能できない人生は

まだ暫く続く

なかなか春の陽気が安定しないが

さすがにしびれを切らしてか

ちらほらこちらのシャツ着用してのご来店が増えて来たそうだ

心の臓に弾丸を撃ち込まれたかの様に

どす黒い血の塊が左胸にベトリとついた


小さな主張がシャツとしてバランスがとれたなあと思う

それにしても三月があまりにも不毛だった

もっといろいろと出来たはずだ

普段から思い通りの日々を過ごしているわけではないが

この3月は兎に角上手く行かなかった

4月全てを取り戻さなくちゃ行けないが

あまりにもやる事が多過ぎる

右腕となるべき南の門番はずっとしびれたまま使い物にならないし

田和がいなくなった北山は既に完全に事務所化している

北山もしっかり店舗運営したいのだが

まだまだ僕らには時間がかかる

でも

やるしかなし

展示会の期間だけお許し頂き

それが終わったらしっかり店を組み立て直す

『北山にこっそり良い店がある』

そう言われるようになってみよう

よし

そのためにもしっかり展示会の準備だ


エアポケット

サンプルの発注が一通り終わってから約1週間

事務所はそれまでの混乱の傷跡と共に

ぴたりと動きが止まり

耳鳴りが聞こえる静けさを取り戻す

そのど真ん中に

本当に何も届かず

何も送らず

誰も来ない1日が有る
昼飯を食って

珈琲を飲んで

アーロンチェアの背もたれを解放して

暫くボーと天井を見ていた


ただ

それは一昨日の事

昨日からじわりと慌ただしさの波が打ち寄せて

また落ち着かない磁場が事務所に波及し始めた


この期間に休みを取れば良かったと言われたが

普段から休みを取らない人間が休みを取ると

やる事は決まっている

仕事をするだけだ

休みは何度もとろうとしたが

不安で休めない

病気だと思う


三月をまた電光石火で消失して

もうすぐ4月をまた駆け抜ける

東京の展示会が晴れ晴れしい気持ちで終わる事を祈る

帰りの新幹線で

いつも食べる幕の内弁当に黒ラベルをつけるかつけないか

もう少し時間があるから

黒ラベルのために出来る限りの手を打ってみる


井端


チノクロスで細く奇麗なスラックスを創った

パンツに関して

コートやカットソーと同じ感覚でデザインをするのは無理

そうしたくも無い

もちろん少し代わった物も時には創る

でも

それら全ては特定のコートやジャケットを思いながら製作している

このMR3018は遡れば前に勤めていたレーベルにルーツがある

それを僕なりに創り直し

何年もかけて少しずついじりながら

そうだな

彫刻みたいな作業

そして何年もかけて

このフォルムに成った

特にへんてこなところはない

ただいろいろ拘ってはいる

バックポケットの位置だったり

持ち出しの長さだったり

そして何より

この横からの面構え

腰から踝までの身体の隆起の頂点を直線で結んだストレート

奇麗に仕上ったと思う

来年も再来年も

きっとこれは創り続ける

大きくオーダーが付いたりはしないけど

大事な作品だ

今年はいつもより少し売れていて気分がいい

100着売れたコートだって

10本しか売れないパンツだって

同じ時間がかかっている

派手に大きなホームランは打たないが

ここぞという時にしっかり仕事をする

このパンツは言わば

merphの井端




柄々と爛々

こんなにシャツを創ったシーズンは初めてだな

それもチェックにボーダーそしてストライプ

ガラガラだったシャツ品番が今や柄々

ジャケットとコートの在庫が尽きるこれからのシーズン

毎年困っていたが

今年はシャツがある

春満開

北山橋の信号待ちで出くわすこの花

なんだか化け物に見える
気に食わない匂いを発しながら風にそよぐ姿は下級の妖怪のごとし

花が嫌いな僕はいつもそんな目で彩る奴らを見ている
自己主張の強い花弁どもの繁栄が終わり

緑のグラデーションになる季節が待ち遠しい

その頃には仕事も落ち着いて
一年で少しだけ気を抜ける2週間がやって来る

早く散ってしまえ


今日は事務所に大物のサンプルが届く

それが待ち遠しくて6:49に起きた

確か眠ったのは3:00頃だったと思うが

目玉が爛々として居る

バイキンマンどころの騒ぎじゃない

スペインの子羊の生革を剥いで創ったロングコート

早く見たい

早く着たい

苦しんだ製作期間の終わりを告げる至福の時間

これから1週間

形を成した我が作品に静かな北の事務所で酔いしれる



八重の桜

昨年のちょうど今頃

事務所の移転祝いに頂いた数多の酒を飲むために

友人達と何かつまみを持ち寄り事務所で宴会をした

その時

どうせなら花見にしようと通販で桜の盆栽を買った

ところが花に興味がない僕が選んだのは八重桜

4月末から5月頭に咲く桜
花見はその枝を見つめるだけのものとなった

ただ

その咲き頃ならば展示会が終わってから楽しめる

田和にしっかり面倒を頼んで2週間の展示会に出かけた

話が違った

これが出発前夜4月7日にとった写真

僕の受けて来た教育が間違っていなかったのなら

4月7日は4月上旬だ

田和の愛情が十分過ぎたのか

日当りの良い事務所の気温に体内時計が狂ったのか

1週目の展示会が終わった週末

田和から『満開』の知らせが入った


東京から戻った僕の目の前にあった八重ちゃんは

立派な桜餅に成れる大きな緑の葉っぱをつけていた

その葉を見ながら

来年こそは

そうつぶやき毎日霧吹きで水をやり

時々肥料も与えて

僕なりの愛情を注ぎ込んだのだが

乾いた細い枝に生気を感じない

ここから奇跡の大挽回はあるのか

のぞみは薄い

中日 吉川 八重桜

どれか一つでもどんでん返しを見せてほしい