リトルボーイ

ここ数年広島に縁が深まり何度も原爆ドームを見た

あの日炸裂した真下に連れて行ってもらい

空を指して

『ちょうどあの辺りで炸裂したんだよ』

そう教えられた

見上げた空は快晴で

その下には朽ち掛けのあの建物が

あの日のまま残されていた


確か

リトルボーイ投下の第一候補は京都だったと歴史の授業で習った

人口と盆地という地理的な要素が原爆の効果を計るのに最適だったからだと

一部の将校は7月まで京都に落とす事を強く求めたが

結局は文化財の多い京都を破壊する事は

敗戦後の統治活動で日本人の反感を買うから避けられたと

そして最終の候補として上がったのが

新潟

小倉

長崎

広島

アメリカ人

勘違いするな

何処に落としたって差などない


原爆が落とされた事実は

あの日

広島に居た人々とその子孫にとって

今もなおあの日のまま残っている

縁あって酒を飲む仲になった広島縁の友人達の日常にも

必ず1945年8月6日が消えずに残っている

残酷

無数の命を奪い

助かった命の未来をねじ曲げた殺戮兵器につけられた名前

”リトルボーイ”

虫酸が走る


理由なんて興味もない

誰の責任かなんて話してもしょうがない

どんなに深刻に考えても僕も両親も爺ちゃんも婆ちゃんも被爆していない

そんな人間達に当事者の理解は出来ない

でも

起きた事をちゃんと知っておくべきだと思う

あの日の事を教えてくれる人の話

ドキュメンタリー

書物

絵画

写真

目をそらさず

耳を塞がず

居ようと思う









破壊豪雨と妥協の金色

猛嵐のなか現在進行中の制作の打合せのため

古の街へ向った

今出川辺りから降り出した雨は

最速稼働のワイパーに仕事をさせない歴史的豪雨となり

視界はフォトショップの加工画像の様になってしまった

当然徐行運転

南に向う道の遥か向こうに

極太の稲妻が天と地をつなぐのを何度も見ながら

慎重にアクセルとブレーキを踏み分けて前に進んだ


五条当たりに着いた頃

ようやく雨が常識的な範囲内に戻った

そして

ふと横を見るとそこは川になっていた

後から前から横から消防車がやって来て

地下駐車場のある何かの施設に水を吸い上げ始めた

消防車が水を撒かずに水を吸うという笑えない状況を横目に

大幅に遅れたため一般道ルートから高速ルートにナビを変更し

Sanctum号に搭載されたビンテージもののナビゲーションシステムには無い

新しい高速を飛ばした

そう

文字通り飛ぶようにして橿原神宮に到着したのは

約束の時間20分前だった


恐怖すら覚える豪雨を乗り越えた僕らを待っていたのは

旨いスペイン料理を酒を飲まずに頂きながら

打合せをするという悲しい試練

途中

ノンアルコールビールという

どこかの悪い神様が与えたもう妥協の金色に魂を売ったが

すぐに後悔をして中国四千年の歴史が生み出したお茶に路線を戻し

ハモンセラーノとイワシのマリネを咀嚼した


何かに試された様な半日の大人の遠足

この成果は9月の中頃に皆さんにご覧頂けると思う

遊んでように見えるかもしれないが

本気で遊ぶと意外と仕事になる

そんなものだ






真夏の魔術

大都会には何でもあるようで意外と沢山手に入らない物がある

京都は有名で伝統のある街だけど

正直都会ではない

だから

東京や名古屋に行くといろいろとうらやましい事があるが

洋服の制作などと言う特殊な仕事をしながら暮らせる田舎町は京都以外にない

我が儘を言わせてもらえば

あと旨い焼き鳥屋があればここは完璧だ

洋服で成功したら

焼き鳥と手羽先とカレーうどんが旨い店を次の目標にしたい


ただ

京都の八月は堪え難い

昨夜も

少し涼しいな

そう思いながら歩いた帰り道

なぜか次第に朝がにじみ出て来る

湿気という真夏の魔術

じっとりと身体にまとわりつき

不快感から自律神経でも狂わせるからだろうか

汗が身体から吹き出して来る

そこに37℃とかいう気温が重なれば

ここはもう熱帯盆地

憶測だが

クラー病の発症率日本一なのではないか

それでも僕らの商売の主戦力は既に秋冬の新作

怒濤の入荷にストックルームは洋服の壁になっている

まだ夏のピークは少し先だろうけど

魔京へお越しの際はどうぞ我々の新作をご覧頂きたい

コンクリートの箱をキンキンに冷やして

お待ち申し上げる


仁王立ち

春夏の生地を探す作業がようやく一段落

主役の生地はさっさと決まっているのだが

その付属的に使う生地の捜索に実に2週間を費やした

問い合わせのメールの返答は

『廃番』

『在庫切れ』

ようやくサンプル着分が見つかっても

『継続の予定ないし』
夏の暑さも手伝って

全てを放り出したくなったが

そんな度胸も無くねちねちと探し続けた

そして

ようやく全てのデザインに何とか納得のいく生地を差し込めた

さあ

後はサンプルが上がるのを待つだけ

ここからはただワクワクする日々が続く

悩み苦しんだ北山の二週間

その間

cassowaryには秋冬の新作が並び

ひさしぶりの立ち上げフィーバーに湧いた

その立役者

merphではこのロングシャツ

軽い羽織り物経のリクエストはずっと聞こえていたんだけど

コートを創るとどうしてもどれもガッツリ重厚になってしまっていた

そこでこのところシャツを重くする方法でそのポディションを制作して来た

それが今年

どうやら皆様の合格を頂ける出来上がりになった様だ


全てを創るつもりは無い

ただ

弱点と割り切るつもりも無い

苦手だったシャツの制作に

merphなりの仁王立ちの仕方を手に入れたと

そう

思う




継承と変化と向上

9年目も創り続けるパーカ

首元のボリュームは昨年より更に増した

生地は好評を受けて昨年と同じスウェードタッチの微起毛裏毛

4色の展開
上記2色の他にasholiveを創った

そのなかで今回圧倒的に人気なのが

camel

この生地の特徴にこの色が非常にマッチしたと僕も感じる

何となくmerph_animaの方ではエントリーしなかったのだが

女性の顧客様よりそこを叱られた

申し訳ない


洋服の世界で定番と言われるポディションなのかも知らない

でもこのパーカはこっそりいろいろなトライアルを繰り返し

技術的な向上をして来ている

その上での8年の歴史を継承して行く取り組み

簡単に定番と言わないようにしている

新型を創り出すのと同じように

丁寧にこの我が社の立役者を大事に創り続けたいと思う

あかね空

暫く動けなくなるくらい綺麗な空

もうすぐこんな夕暮れが毎日続く日がやって来る

好きな音楽はこの風景に合う物が多い

アコースティックギターとストリングスの壮大なロックバラード

来週の月曜日はそんな曲を聴きながら男三人で

Sanctum号を走らせて打合せに向う

大人の遠足

今からワクワクしている



最近2014年の春の制作にのめり込んでいるので

秋冬の新作の紹介が鈍っている

ところが

店頭では秋冬が好評頂戴しているようで

在庫があやしくなり始めているものが既に出ている

ありがとう

merphは今年シャツが好調

先日紹介したMR2022はROLさんの別注分MR2022 denimがsize1,2と完売

size3あと2着

欲しい

実は


写真はカモフラージュのランバージャック

この生地で創ればもうほとんどCPO並みのジャケット気取り

秋冬の軽いジャケットやコートは生地が軽くなれど

工賃は重い物とは変わらないから割高になる

だからシャツを重い生地で創るとそのポディションの物が出来る
春にも使えるように

ユーティリティーに

良いのが上がったと思う




cognac


型紙上はシャツ

しかし

上がってみればほとんどコート

merphとしてリリースするシャツは
シャツとは言えど

ほとんどがジャケットやコートの代用になる物

個人的な理由だが

正統派のシャツあまり着ないし

作るのも面白く無いから

大好きなコートやジャケットの迫力を持たせている

迷彩柄も良いアクセントになったと思う

いかがでしょう


もう一色はカーキ

それから

吉祥寺ROL様の別注バージョン

ライトオンスデニムバージョンに少しだけcassowaryも便乗

これも上出来

夏の盛りに暑苦しい洋服を

ぜひ試練だと思ってご覧頂きたい

ビッグヒットとハードヒット

anm6013 ash

沢山の問い合わせに加え

卸先様からも早くも大きな追加オーダーを頂いた

今シーズンのキラークイーン

anm6013

merph_anima初のヒット品番の誕生

laluを始めた時もそうだったけど

こういう存在が誕生すると波に乗る


さて

それではこのクイーンの詳細をば

まず生地は超微起毛を施したスウェードタッチの裏毛

フワフワとした肌触りはずっとなでていたくなる

弊社伝統の大型フードを採用して

そのボリューム感とバランスを取るべく

袖口にパフを入れて

スカート部分は大きな半円でドレープを出した

ウエスト辺りにポイントが必要だと思ったので同素材の細いベルトに

小さなアンティークゴールドのバックルをつけた

上出来


卸先様から嬉しい事言われた

『ディスプレーに着せたら凄い迫力で人が集まりだした』

サディストは褒められると図に乗る

そして新しい物を創りたがる

どんどん褒めて頂きたい

がんばれと言われても大丈夫と言われても何の意味も無いので

兎に角サディストは褒めて頂きたい

春の制作に大きく影響が出るから


さあ

気分が上がっている日曜日

月曜の朝までに大量の仕事を仕上げて

来週に先手を打つ

そして

19時からは今月二度目の黄昏れフラットーサーブ

小細工無しで

黄色いボールをハードヒット




巨大牡蠣

大きな岩牡蠣を

贅沢にも焼いてもらった

生より火の通った物が好きだから

いつもこうしてもら

夏の盛りの大きな海のお宝を頂きながら

打合せはずんずんと進み

来るべきお盆の向こうのXデーに向けて

あれやこれやと京都中を飛び回る七月の末


秋冬の生産がそろそろ一段落

しかし

今年は春夏の進行がとびきり早いので8月もしっかり働く

僕が利口なら

この早く始まった制作を早く追わらせるのだが

どうせいつものように

ぎりぎりまでずるずると押すのだろうと思う

明後日はまたテニス

今度は前回よりしっかり動けるようにしたい

その代わり

翌日の筋肉痛は酷くなるだろう

だから

週末のうちに筋肉をつかう仕事は仕上げておく



欲張り

秋冬の立ち上がりで慌ただしい中

じわり

じわり


2014年の春の制作を進めている

スケジュールびっちびち

相変わらずの無計画やりたい放題

それでも何とかなるのは

僕の力ではなく

工場の方々の力

心底感謝している


あれが足りないこれが足りない

大騒ぎの毎日

ただ

進行している仕事は凄く楽しく

あれもしたいこれもしたい


どんどん欲張りになって来る

暑さでばててる暇はない