新システム

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サッカーにも画期的なシステムが突如現れることがあると思います
それは既存のやり方で真っ向勝負しても
強豪国に歯が立たず
自国の特性を活かす戦略を懸命に考えた結果生まれたものだと思います

洋服業界は長く呪いにかかっています
どんなに時間が流れて
気候が変動しても
黎明期に誰かが考えた
その当時画期的だった方法を皆がずっと続けています
もちろんそれを続けていく立場の人たちがるのもわかっています
しかし
盲目に右向け右で考えることをせず
歩いている人たちがたくさんいます

私もその一人でした
しかし早くからこの業界に身を置き
30歳で独立した時
はたと立ち止まって
ちょっと考えてみたんです
果たして皆が同じようにならなきゃいけないのか
そしてなれなかった人々は洋服を作る資格がないのか
目の前の当たり前は本当に自分にとって有効なのかと
そこで
どうせ期待されていないのなら
一度嫌なことを全てやめてみようと思い
次から次へと洋服業界のあたりまえを削除してみました
その結果
ご存知の通り
看板も名前もタグもない店が出来上がったわけです

そして辺境の地京都で
ただ洋服を造り自ら販売していく中で
大きな発見をしたんです
それがシーズンごとの製作の廃止です

サステナブルだ生産ロスだと言う割に
洋服の国の住人は皆
腐りもしない服に自ら大声で賞味期限を叫びます
20XX年SPRING SUMMER!!
20XX年AUTUM WINTER!!
半世紀以上前に画期的だったこのやり方は
当時大きくもてはやされ
セレブたちの社交場と合間見えて一時代を築いたのです
しかし
あれから50年60年の時が過ぎ
世界中がリアルタイムで可視化されて
社会全体が豊かになった今の世界では非効率で破滅的です
もう今や『流行』などというものが
旧メディアとともに滅びつつあります
個人に基軸を置いて
製作者は自分で発信し
消費者は自分で選択しています
この状況になるまで
情報を手に入れる術のない時代
その伝達役としてバイヤーやジャーナリストが
洋服の普及に一役買った時代は確かにありましたが
その時代にあまりにも無責任に振る舞い過ぎたため
製作者と消費者が直接繋がれる現代において
これまでの彼らの発信した情報の希薄さが露呈してしまい
その居場所を瞬く間に失ってしまいました。
もちろん本物もいました
そして本物は今もなおその信頼を失っていません
しかし残念ながらその大半は大きな勘違いをして
洋服の界隈にただたまたまいただけなのに
世界を支えているような気になっていたのでしょう
私の知人のファッションジャーナリストの中には
『私は上級国民だ』と発言した者もいました
まさに裸の王様です

merphは京都という国際都市で
無差別に世界中の人々に極力情報を公開せず
ガラス張りの店で剥き出しで洋服を展示してきました
たったそれだけのことで
呪いにかかっていた頃(展示会をして取材を受けていた頃)と比べ
店舗売り上げが4倍になりました
単にインバウンドの恩恵を受けただけではなく
洋服を売るシステム自体を変えた結果です

バイヤーやジャーナリストがとりあえず言う
『merphの世界観が見たい』という初々しい初期呪文
これに踊らされてフルアイテムの企画し続けてきましたが
そんな必要は全くないんです
シンプルなシャツやカットソー、パンツの製作など
今やユニクロに任せれば良いのです
我々が半年待っても使わしてもらえないミシンで
美しいTシャツを作って1000円で売ってくれます
某ブランドと同じデニムを使ってそれより遥かに美しく縫い上げて
1/10の値段で売ってくれます
だから
merphはとにかくコートを作ります
そこが一番得意であり成果をあげるから
その中でこれはどうしても作りたいと思えるTEEシャツやパンツは
コートの生産数の1/4程度は作ります
しかしコートに関しては
初回100〜200生産して
初動が活発ならば
すかさず50枚単位で追加生産をします
それらが完売するとすぐさま新しいコートを生産します
季節で無理に区切らず
売れるものを売りまくって
完売を待たず次から次へと新作をリリースする
だから定番なんてありません
ずっと新作をリリースしていきます
この生産サイクルとシステムが実に効率が良く
merphの最適解なのです
春夏
秋冬
さらに20XX年と
カテゴライズ(賞味期限表示)することがグローバルになった今の時代では
ナンセンスなんです
merph旗艦店は夏でもコートが売れ続けます
南半球北半球の季節の違いだけでなく
『気に入ったコートを見つけたら
それを今着なくても手に入れたくなる
ただし、その価値があれば』
merphのコートを買ってくれた人たちにそう教えてもらいました
世に漠然と需要があり
そこに目掛けて商材を投入する
大量生産大量消費のマーケティングを我々がやっても
どこにも攻め込む隙は見つからないんです
だから
merphのコートと現代の環境と京都という国際都市
全ての要素から絞り出した新しいシステムで
洋服業界のカッチこちの脳みそに
風穴を開けていくのです